ヒデキのゆるゆる渚歩記/ep2 -ボトルメッセージ-

サトウ ヒデキ
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サトウ ヒデキ

Message in a bottle

皆さん、こんにちは。週末の渚歩きで10月になっても真っ黒に陽灼けしているヒデキです。
前回よりスタートした 『ヒデキのゆるゆる渚歩記(なぎさあるき)』の舞台ともいえる海辺散歩は、ワタシにとって大好きな水族館や博物館を訪れるのと同じ感覚なんです。
そのなかで “漂着物”は、自然やヒトの文化などの様々な側面を見せてくれる “展示コンテンツ” であるとも言えます。そんな誰が作ったワケでもない、偶然が折り重なってできた無作為なミュージアムを毎週末のように楽しんでいます。

さて、前回の episode1 では「思いもよらぬ漂着物との出逢いが、渚歩きの最大の魅力」というお話しをしましたが、今回は、そんな“偶然の出逢いの物語”です。

海に託すメッセージ

『出逢い』と文字で書くと、なにかロマンチックな雰囲気が漂いますね。
自らのメッセージを容器に封じ込め、海の流れに託す【ボトルメッセージ】も偶然の出逢いに期待するロマンチックなコミュニケーションツールのひとつではないでしょうか?

ボトルメール】とも呼ばれるそうですが、瞬時に、そして正確な宛先に配信される電子メールとは異なり、海流や波まかせでいつ誰に届くともわからない不確実なメール、それがボトルメッセ―ジの最大の特徴です。大海を介して世界と広くつながっている点はネットを媒介にした電子メールと同じというのも興味深いポイントです。

ただし、ボトルを海に流す行為は自然環境に影響を及ぼす “海洋投棄” にあたりますので、環境配慮の観点からお勧めし難いコミュニケーションツールであることをご承知おきください。

※波浪や風、潮流など、さまざまな要因がボトルの行先を決める

さて、話は海外に飛びます。
2018年1月に、オーストラリアの海岸で世界最古のボトルメッセージが発見されたそうです。
ボトルの中には古びた紙にドイツ語で書かれたメッセージが入っており、そこに記された内容や船の名前、日付などからドイツ海軍天文台が1886年に海洋調査で流したものだとわかりました。その後、オーストラリアの博物館が紙質やボトル形状(オランダのジンの瓶だったそう)、船の航海日誌などを調査したところ、それが132年前に書かれたことが実証され、それまでの放流から発見まで108年の記録を更新したのです。
こんな話を聞くと、「まるで、海を漂うタイムカプセル!」というイメージが頭に浮かびます。

実は、ワタシも地元茅ヶ崎の海岸で、2度ボトルメッセージを発見したことがあるのです。

My-1st bottle massage

1度目は、2018年の3月に、手紙の入ったインスタントコーヒー(?)のビンを波打ち際で見つけました。
手紙には “happiness is just around corner (幸せはすぐそこに!)” の文字が記された便箋に、数色の蛍光ペンでメッセージが書かれていましたが、残念なことに瓶の中には水が浸入し、蛍光ペンの文字が滲んでしまったために内容はほとんど判読できませんでした。読み取れる文字から日本人の小学生、または中学生の女の子が書いたのかな?という印象を持ちました。便箋やインクの状態から何年も経っているものではないと思われます。

※判読不能のボトルメッセージに、ちょっとガッカリしたワタシ

My-2nd bottle massage

2度目は、今年2019年の7月28日、今度はガラス瓶ではなく、広口のプラスチックの容器でした。
なんとこれが本当に「奇跡か!?」と思える漂着物だったのです。
ボトルのフタには、“英ちゃんへ とワタシの名前(漢字で書くと英樹です)が記されていました!

これは奇遇、まさかの自分宛て?!フタには名前の他に “2019.7.15” の日付があり、海に流されてから2週間を経てワタシの元に届いたということがわかります。
ワタシ宛てだからという理由で開けさせてもらいます。(前回は宛名不明でしたが…)
この容器にもタップリと水が浸入していましたが、手紙と海水の他にも何か入っているようです。

※まさかの自分宛のボトルメッセージは、まさに、ビックリマン!

中身を取り出してみると、四つに折り畳まれ “英ちゃんへ” と書かれた数枚のピンクの便箋、そして未開封のビックリマンチョコとポイフルが入っています。なんとお菓子同封のボトルメッセージでした。

今度の手紙はマジックインキで書かれているため文字は滲んでおらず判読できそうですが、海水で濡れてしまっており、開くと破れてしまいそうなので陽に当てて乾かすことにしました。

そして、何気にポイフルに目をやると、その袋には 大好き!! の文字が、マヂか?
こ、これは、毎週この海岸に通っているワタシへのラブレターかもしれない!手紙にはマークがついています!ダメです、ワタシには妻子がいるんですよ、でも気になるな~。

※食料の乏しい無人島で見つけていたら、かなり貴重なボトルメッセージ

一方のビックリマンチョコに文字は書かれていませんでした。普段めったにお菓子を買わないワタシなので、ビックリマンチョコが現在でも販売されているとは知りませんでした。それこそ初めは過去から届いたタイムカプセルなのかと思ったくらいです。そしてポイフルに目をやると、「んんんんっ!!?」
なんとそこには、“えいちゃんに 届きますように” の文字が! “ヒデちゃんに~” ではなかった!

※英ちゃんは「ヒデちゃん」以外に「えいちゃん」とも読むことを再認識

ワタシ宛てではないと分かった以上、この手紙を読むワケにもお菓子を頂くワケにもいきません。
手紙がある程度乾いた状態になってからお菓子とともに容器に戻します。でも、そのまま海に流すと海洋投棄になってしまうので、“えいちゃん” に見つけてもらえることを願いつつ、浜辺の流木の上にそっと置きます。
あー、お菓子を食べなくて良かった~。 少し恥ずかしい気持ちになりながらもその日は帰途に着きました。

※どうか、宛先の“えいちゃん”にみつけてもらえますように!

その後…

実は個人的に、渚で見つけたモノの写真に短文を添えてSNSに投稿しているのですが、そのSNSを読んだある方から 「これは7月の新盆に、海で亡くなったお子さんに宛てたものでは?」というコメントを頂きました。
『海で亡くなった方へのメッセージ』いう考えは、ワタシにも浮かんでいましたが、同封されていたお菓子を考えると、なるほど、“えいちゃん” が幼い子ではないかという考えに合点がいきます。
 
翌週末、ボトルは同じ流木の上にそのまま置いてありました。
関わってしまった者としてちゃんと真相を知っておきたかったので、手紙を読ませてもらうことにします。

結論から先に言ってしまうと、このボトルは、今年の初めに海外の海で不慮の事故に遭い亡くなったYOUTUBERの “えいちゃん” に向けて、『海の日』である7月15日に故人が好きなお菓子とともに感謝と哀悼の気持ちを込めて海に流したものであることがわかりました。幼い子どもではなかったけれど、やはり海で亡くなった方へのメッセージだったのです。

※くれぐれも海洋汚染につながる行為は慎みましょう!特にプラスチック製品はダメですよ!

漂着物の物語

後半は、ちょっとしんみりとした展開になってしまいましたが、漂着物ひとつとってもこんなドラマがありました。ボトルメッセージは内包された手紙などから海に放たれたワケなどをある程度知ることができますが、多くの漂着物は、どこからどんな理由で流れてきたのかその真相や物語を知る由もありません。
冒頭で、“漂着物”は自然やヒトの文化などの様々な側面を見せてくれる “展示コンテンツ”であると記しましたが、漂着物という展示物には、ネームキャプションや解説文章が添えてありません。そんな自らは何も語らない、語れない漂着物たちに代わって、妄想や想像を思いっきり巡らせたワタシなりの考察や物語を次回以降も、この ”ノムログ” を通してお伝えしていきたいと思います。

(文章&写真 サトウヒデキ)

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『ヒデキのゆるゆる渚歩記』 back number はこちら!

ep8 「違和感を探せ!」クイズ編2 ep7「コレなに?」クイズ編 ep6「コロナ禍の浜辺」
ep5「漂着ゴミ図鑑」 ep4「いきもの図鑑」 ep3「自然感察眼」 ep2「ボトルメッセージ
ep1「海岸ミュージアム」

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テクニカルディレクター(いろいろ擬態中)
G坂本並みの守備範囲と打撃力

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