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本稿では乃村工藝社グループ(以下、ノムラと表記)が「業務効率化」や「フロントローディング」等の効果によって「業務プロセスを改革する」事を目指したBIM(Building Information Modeling、ビム)※の取組みについてご紹介するシリーズ記事です。今回はその活動の一環として、ワークショップを開催した様子をレポートいたします!
※BIMとは「Building Information Modeling」の略称で、コンピュータ上に作成した3次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築することです。(国土交通省HPより引用)
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①BIMの取組みについて「BIMで拓く空間プロデュースの世界」
ワークショップの動機
2017年からこれまでの間、BIMルームでは152名に対するRevit講座を実施しましたが(2021年9月時点のノムラ全体)、卒業生がRevitを使う機会が無いまま、操作を忘れてしまっているという実態がありました。そこで、今年度オープンした社内コミュニケーションスペース「RESET SPACE2」を題材に、【BIM WORKSHOP – RESP2をつくろう】※を企画しました。実際のデザイン・設計、施工は終わっているので「後追いBIM」にはなりますが、自社物件なのでチャレンジする題材としてふさわしいと考えました。
ワークショップの参加者人選に関しては、前向きに参加していただきたかったので「手挙げ制」の募集形式にしました。「業務多忙な中、はたして参加希望者はいるのだろうか?」と内心ドキドキしましたが、BIMに熱量のある皆さまに多数ご応募いただけることになりました。
※「RESET SPACE2」 についての詳細はこちら
ワークショップの概要
概要:RESP2のBIMデータを作成する
目的:「Revitユーザーによる知識・技術の向上」および「NOMURA BIM GUIDELINEを理解する」
期間:2021年6月1日~9月中旬
参加対象者:Revit講座卒業生または前職や学生時代にRevitを使用していた方
募集コース:
Aコース:システムファミリ(3名)
Bコース:コンポーネントファミリ(13名)
Cコース:Leica BLK360点群スキャン(5名)
Dコース:フォトグラメトリ(3名)
Eコース:施工BIM(3名)
Fコース:CG (A~Eコースのオプションで12名)
※このワークショップでは、各コースでデータ作成を分担し、随時、統合して1つのプロジェクトデータを完成させます。
ワークショップの運営
コミュニケーション手法はオンラインとオンサイトを併用しました。
レクチャーについては「Teamsテレビ会議」、業務連絡や簡単な質疑については「Teamsチャット」を利用しました。初めは「Teamsテレビ会議」でのレクチャーに抵抗がある方も、次第に慣れていき、むしろ画面共有をする事や、マウスの操作権を渡して操作してもらうなど、効率よくコミュニケーションがとれていました。また、ガッツリと操作方法をレクチャーする時は、台場社屋にある「BIMトレーニングルーム」でハンズオン会も実施しました。各コースにはBIMルームメンバーがメンターとしてついており、何度も顔を合わせて、丁寧にレクチャーすることで、仲良くなり、今後も相談しやすい良好な関係が築けたと思います。(←この関係構築はワークショップの裏テーマでもありました。)
全体会として、キックオフに「開催説明会」、ラストに「完成披露発表会」を開催しました。発表会は各コースの成果データや、作成過程での出来事を披露する会でした。データのこだわりポイントや苦労した点、裏技など、ノムラの知見として集積できたのではないかと思います。また、課題に感じた点や、更なるチャレンジ項目を次のアクションプランに反映させたいと思いました。
ワークショップハンズオン会の様子
データの構成
BIMデータとしての最終成果物はRevitプロジェクトデータ1点でした。
REVITには同時に作業ができるコラボレーション機能があります。総勢24名がLOCALモデルで作業を行い、CENTERモデルを作りあげました。途中、モデルが表示されない事象等もあり、うまくいくか心配なところもありましたが、「密なチャットコミュニケーション」と「素早い情報収集」、そして「諦めない精神」でトラブルを解消する事ができました。
家具などの既製品データは中央モデルに直接取り込むことはせず、リンク機能を使って反映させました。理由は、2つあります。1つは自社のBIMデータに対して、他のデータを混在させない為です(パラメータやデータ設定などが混在してしまうと、シート化や集計表がきれいに表示されない恐れがあります)。もう1つは、メインのBIMデータ容量を抑える為です。
企画資料の抜粋
ノムラではデザイン・設計、施工計画において様々なアプリケーションを使用しています。社員によって常用しているアプリが異なる為、データ(=情報)をプロジェクト内で円滑にキャッチボールするには「アプリケーション相関図」や「データフロー」を作って関係者間で確認してから着手すると、混乱を回避できると考えています。
各コースのご紹介
●A:システムファミリコースでは、システムファミリ(床・壁・天井・カーテンウォール等)を作成しました。
こだわりポイントは下記の3つです。
1.タイルの割り付け
床と同じタイル仕上げの壁面について、目地を合わせることにこだわりました。
2.グラフィック画像の位置合わせ
壁面や柱型のグラフィック(画像データ)の位置合わせにこだわりました。
3.折れ戸パーティション
開いた状態と畳んだ状態のパーディション、タイプ違いを2点作りました。
●B:コンポーネントファミリコースでは、コンポーネントファミリ(テーブル、カウンター等)を作成しました。
手順書に沿ってオリジナルのファミリテンプレートからデータを新規作成し、必要なパラメータも入力しました。ファミリデータはBIMルームメンバーのチェックを受け、OKが出たものをプロジェクトデータへロードしました。クッションのラウンド感や、のれんの布っぽさなど表現にこだわってデータを作成していました。
セミナーエリア
フレキシブルエリア
ベンダーエリア
自販機エリア+エントランスエリア
共通設備
●C:Leica BLK360点群スキャンコースではLeica BLK360(3Dレーザースキャナー)で天井設備をスキャンし、Revitプロジェクトデータへリンクし、重ね合わせました。仕切られた部屋同士の点群の合成に苦労しましたが、撮り直しをしたり、合成の順番を変えたりしてきれいに合成ができました。スキャンで取得した点群データは、早速、プロジェクターの吊位置の設計検討に活用されました。
点群データとRevitデータを重ね合わせた様子
●D:フォトグラメトリコースでは不⾜しているアイテムをフォトグラメトリで3Dモデル作成し、モデリングしました。こちらは私がコースリーダーとして担当しました。スマホで写真を撮り、ReCap Photoで3Dデータを生成させました。次に、Fusion 360内でモデリングし、最後にRevitファミリを新規作成し、Revitプロジェクトデータへロードしました。
各フェーズで予期せぬエラーがありましたが、うまくいくと皆で拍手して喜びました。今回はFusion 360内で下絵をなぞってモデリングしましたが、岩や植物など、なぞりづらいアイテムはそのまま、ポリゴンデータを利用する事が考えられます。その際、ポリゴン数の調整や、表層のテクスチャーをどう表現するのか、BIMデータにする時のパラメータの入れ方は?など、今後の研究課題です。
色々な角度から写真を撮っている様子と、チャットによるコミュニケーション
●E:施工BIMコースではRevit上で施工計画を体験しました。
施工計画で想定される「集計表作成」や「詳細ビュー作成」、「フィルタを使った色分け図」などを作成しました。「集計表」はそのまま積算につながるため、設計変更の多いノムラでは拾いの手間が省けて効率化につながります。機能がMicrosoft Excelと似ている為、参加者一同興味を持って作業されていました。
協力社区分を表現した図
●F:CGコースではエリアを分けてRevitデータからCGを作成しました。CG作りは各人のプロジェクトで即採用できる為、特にデザイナーに人気がありました。
利用したアプリケーションは、ビジュアライゼーションツールの「Twinmotion」とレンダリングツールの「Lumion」です。
レンダリングかかったCGを披露されるとつい「おおー!」と声が上がります。多少、脚色されていたとしても、空間のイメージやコンセプトが表現されているCGには訴求力があります。みなさん作業に没頭されていました。
LumionによるCG
TwinmotionによるCG
●「既製品アイテム」はBIMルームメンバーが作成しました。
メーカー品の椅子等はBIMデータや3DCADデータを探しました。見つかった場合は一旦、AutoCADでポリゴンデータをきれいに整えてからRevitファミリへCAD挿入しました。見つからなかった場合はカタログに記載されているサイズや現物を測って、ファミリ新規作成しました。
植栽に関しては、同等のBIMデータが皆無状態であり、「3D Warehouse」で類似の植栽を探してダウンロードし、SketchUpとAutoCADを経由してきれいに整えてから、RevitファミリへCAD挿入しました。
●「シート(図面)化」はBIMルームメンバーが作成しました。各コースのみなさんが入れてくださったパラメータがシート化の際に発揮されます。
オリジナルのプロジェクトテンプレートのお陰で、「シートリスト」や「マテリアルリスト」等が自動できれいに生成されました。また、集計表と連動したアイテムタグも簡単に呼び出せました。
ワークショップ成果品データ
そして、3.5ヶ月にわたるワークショップを終え、無事にデータが完成しました。
WEB環境さえあれば誰とでもデータ共有しやすいところもBIMの魅力ですね。
URL:MyLumionはこちら ※10ヶ所のパノラマ視点へ移動が可能です。
まとめ
今回のワークショップは「Revitユーザーによる知識・技術の向上」と「NOMURA BIM GUIDELINEを理解する」が目的でした。BIM導入の小さなアクションですが、参加者やBIMルームメンバーにとっては大きな体験価値があったと思います。
みんなで作りあげたBIMデータは次の「活用フェーズ」で利用する計画です。「ヴァーチャル展示会」や「AR活用」など、BIMデータを活用した空間プロデュースを検討しています。ご報告できるような成果がまとまりましたら、また掲載いたしますので、ご一読いただければと思います!
次回の記事は、参加者によるワークショップ体験談をご紹介させていただきます。
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