便利はEC。楽しいのはリアル。 山田遊さんと『リアル空間』ならではの体験価値を考える

下國 由貴
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下國 由貴

「いま、そしてこれからの空間づくりが持つ可能性」をテーマに、
様々な先駆者・挑戦者にインタビューを行う対談企画!
第一回は、バイヤー目線で空間をつくる株式会社メソッドの山田遊さん。

インターネットの普及により、「情報を得る場所・買う場所」がリアルな場所ではなく、画面越しである機会が増えてきました。とくに、商品の購入はECで行われるようになったことが大きな変化でもあったと思います。

「ネットで買い物すればいい」という時、空間をつくることはいらなくなるのか?

未来の空間に求められることは何か?を考えていくきっかけとして、
空間を通した生業をされている方々のお話を伺いながら考えていきたいと思います。

本企画第一弾として、インテリア ライフスタイル展、アトリウム特別企画
「The Corner Shop – How to make a market-」(2019年7月17日(水)~19日(金)東京ビックサイト)を
ディレクションしたmethodの山田遊さんに聞いてみたいと思います。

インテリア ライフスタイル展 アトリウム特別企画「The Corner Shop – How to make a market-」の前にて。右:山田遊(method)左:下國(乃村工藝社)

下國
下國です。本日はよろしくお願いします!
まずはじめに、山田遊さんのフリーランスのバイヤーというお仕事について教えてください。

山田
代表を務めるmethodは立ち上げから12年になるのですが、この成り立ちからお話しします。
お店で販売する商品を選んで、仕入をするバイヤーを担当していて、30歳になる頃、独立しようとしたのですが、当時の僕はデザインができるとかカメラができると言うような、「手に職」がない。
どうやったら独立して社会と関わりながら仕事ができるか3年ぐらい考えていました。
結果、「モノを選ぶ」「モノを売る」は自信があるなぁという経験から、雇われバイヤーという仕事を選びました。

下國
初めて遊さんを知る方のためにもう少し…「method」の企業理念を教えていただけますか。

山田
methodは、あらゆる分野でモノにまつわる潤滑油。そういう存在でありたいと思っています。

山田 遊  method inc. www.wearemethod.com
南青山のIDEE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。
現在、(株)メソッド代表取締役。2014年「デザインとセンスで売れるショップ成功のメソッド」誠文堂新光社より発売。

あらゆる分野でモノにまつわる潤滑油。そういう存在でありたい

下國
ご自分の役割を「潤滑油」という表現で表しているんですね。
「プランナー」も「バイヤー」も自分だけで何かを作り出す
まさに「手に職」という仕事ではないので、一言で説明するのが難しいです。
今回のインテリア ライフスタイル展では、どんな潤滑油だったのでしょうか。

いかに堅苦しくならないか。
従来型の展示ではなく、自分の願う理想の
コミニュケーションを誘発する
街角のコーナーショップみたいに。

山田
展示会は出会いの場所だと思います。
昔、一緒に仕事をしたショップのバイヤーさん、展示会の出展者であるメーカーさんといった、
頻繁に連絡を取り合えていない知り合いと根こそぎ会える場所。
この場をディレクションする僕にとってだけでなく、メーカーさん、出展者さん、すべての関係者にとってそういう場所だと思います。
なので、いかに堅苦しくならない場にしようかを考えてディレクションを行いました。

背広を着て8時間以上立ちっぱなしの出展者…名刺を交換しないとカタログがもらえない来場者…
来場者や出展者が一番クロスするアトリウムの企画展として、The Corner Shopでは、
そういう従来型の展示会ではなく、自分の願う形に変えたかった。

下國 由貴  株式会社乃村工藝社
世界のお茶専門店店長経験を経て、乃村工藝社へ転職。企業ミュージアムやショールームプランニングから、
現在は全国の公共ミュージアムや地方活性ブランディングなどのディレクションを担う。
2014年、食と口腔ケアのショールームカフェ「Kamulier」でグッドデザイン賞受賞。

B to BからB to C へ。展示会はいま、過渡期にある。

下國
遊さんは、展示会の目玉となるアトリウムでの特別企画プロデューサーで、
入口には特設ショップ(CORNER SHOP)by method もかまえています。
(CORNER SHOP)by method のコンセプトを教えてください。展示会の商品とオリジナル商品を実際に購入できる(CORNER SHOP)by method。山田遊さんが店主をされていました。

山田
こちらのショップは、出展者のダイジェストが見られる場所になっています。
海外では、メゾンエオブジェなどインテリアの展示会に行くとディスプレイのダイジェストがあるのですが、
それを「ショップ」というカタチで表現したのが(CORNER SHOP)by methodです。

下國
通常、展示会は商品の売買をしませんが、購入可能なショップがあるのは嬉しいです。
展示会場で売り買いをしてはダメというルールがあるわけではないですよね。
なんでやらなかったのでしょうね。

山田
展示会も過渡期なのかと。
展示会全般に言えることですが、業界向けのBtoBから、一般のお客様も来られるBtoCへ、という流れは最近よく見ます。
天王洲で開催している展示会は、土曜日は一般のお客様も来られるようにマーケットスタイルで開くそうです。
そのような流れもあり、BtoC、というか展示会で直接お客様に商品を売るということに挑戦しました。


THE CORNER SHOPの会場をまたぐ大通り。中心は椅子とテーブルがあり、オープンなコミニュケーションを取れる風通しの良い空間になっています。

下國
では、ここのコンセプトはコミュニケーションでしょうか。

山田
そうですね。
僕自身がディレクターとして、このアトリウムでやったことは大きく分けて3つあります。

山田遊さんがインテリア ライフスタイル展でこだわった3つのこと。

1.会場にいてコンシェルジュ的に人をつなぐ

お客様や関係者の方を迎え入れてコンシェルジュ的に振る舞うことを意識しています。
バイヤー、出展者、デザイナー、プレス関係者、あらゆる関係者をつなぐこと。

2.出展者の質の担保

バイヤーとして、来場者の方から「質が高いね」と言ってもらえるよう出展者のクオリティを高くしたい。
とくに多くの来場者が目にするアトリウムなので、ここに出展してもらう商品や出展者さんは、
昨年から、「アトリウムに出ない?」と声掛けをしました。
おかげさまで今年はそれほど頑張らなくても良い出展者に恵まれました。


山田遊さんがセレクトしたこだわりの品ぞろえ。各商品には、それぞれのストーリーがあります。

3.お客様の動線にこだわってブースの形状を設計

ブースのサイズを一般的な展示会の規格から変更しています。

下國
え!?どういうことですか。

店舗づくり視点を展示会ディレクションに応用した
ブースサイズ変更という『静かな革命』。

山田
各ブースの間口を広くして奥行きを狭くしています。
展示会の最低ユニット、一般的には3m×3mなのですが、今回は4.2m×2.1mで作っています。
この規格を組み合わせてブースを構成しているので、どこにも裏面がありません。

下國
裏がない構成なんですね。
出展する位置での不平等が無い!
どの出展ブースも来場者に対して正面を持っている。まさに“店構え”ですね!4.2m×2.1mでコの字型に構成されたブース。

下國
来場者はブースの奥まで行かなくても、正面に並ぶ商品を見れば良い。
見やすいし、一つひとつのブースが広く感じますね。
こういった発想は、お店の動線を考えてきた店舗づくりの経験によるものでしょうか。

山田
はい。僕のベースはお店づくりの仕事。
お客様の動線を考えた店舗の什器の構成を考えるなど、店づくりにこだわってきました。
その経験は展示会のディレクションにも活きています。このような什器構成は、量販店などでよく行われています。

このような什器構成は、量販店などでよく行われています。

全員にとって満足度の高い状況を作り、
新しい試みを成功させて未来へつなぐ。

下國
3m角という展示会のブース基準から改革するとは…

山田
そうですね。
僕自身、以前から3m角で構成された展示会のブースには違和感がありました。
奥に入りにくい、中途半端な広さがストレス。もうすこし間口を広げた方が入りやすいはず。

お店を作るときは徹底的に「買い物しやすいこと」を考えて動線の設計を行います。
その発想で、展示会全体のブースの構成を考えて実行しました。
お客様の満足度が高ければクライアントの満足度も高い。
こうして、全員にとって満足度の高い状況を作ることが、新しい試みを成功させて未来へつなぐ方法だと思います。

今回お話を伺う際に使わせていただいたテーブルとイスは段ボール製。軽くてシンプル!

新しいことをやっていかないと、
実店舗の売り場はECに淘汰されていってしまう。

下國
新しい試みですね。

山田
そうですね。そういう新しい試みをやっていかないと、実店舗の売り場はECに淘汰されていってしまうと思います。
実店舗における体験を素晴らしくしていきたいです。

便利はEC。でも楽しいのは断然リアル空間での体験

下國
ECが一般的になってきましたが、これからの実店舗や展示会といった、
リアル空間ならではの価値についてはどのようにお考えですか。

山田
利便性では店舗はECには勝てないと思います。
でも、楽しいのは断然リアルだと思います。

ショップだけでなく、カフェスタンドもオリジナルメニューで展開。左はクラフトコーラ。右のボトルは瓶入りコーヒー。


山田遊さんは、飲食物ブランディングも多く手掛けているので、カフェメニューも抜かり無しの美味しさ!


元々お茶好きなところで共通点のあった2人。自家製コーラのレシピ話で盛り上がりました。

下國
実店舗の良さは体験にありますよね。
季節で変わるディスプレイや気の合うスタッフさんとの思わぬ出会いとか…良くも悪くも体験が満足度につながりますよね。
山田さんは、店舗プロデュースの一環で接客するスタッフへのアドバイスをすることはありますか?

山田
接客へのアドバイスはなかなか難しいですね。
正直に言って、店舗空間における満足度は空間デザインによる影響が7割だと思います。
空間を作っている乃村工藝社さんのために言っているわけではないですよ(笑)。

貧しい空間では良い体験は生まれない。
店舗空間における満足度は空間デザインによる影響が7割を占める。

下國:
それは新鮮な視点です。
空間での満足度は、このEC流行りの今でも購買に影響しますか?

山田
施設のハードは作ったら変えられないから、そもそも良いものを作る必要があると思います。
貧しい空間で良い体験は生まれない。
施設は一度作ってしまったら変えられないので、例えば天井が高いという贅沢は
店を出した後に途中からは付加できない貴重な価値だと思います。

ビックサイトは、街なかの展示会場には無い天井の高さがあります。贅沢ですね。

下國
乃村工藝社のプランナーとしていい空間を作り続けていけるよう頑張ります。
ちなみに、乃村工藝社が作る空間についてはどう思いますか。

山田
個性を打ち出すよりも、クライアントが安心する、使いやすい、日本らしさが詰まっているイメージです。

下國
様々な事情を経ての竣工という背景もありますが、手がけた案件数もジャンルも多く、これが「THE 乃村工藝社の代表作!」と全部を包括する例を挙げにくいのと、会社全体であらゆる要求に対応できる総合力が売りなので、そのような印象をもたれるのかもしれません。

乃村工藝社が手掛けたと世間に大きく謳っていないので、知られていない案件もあると思いますが、
バランスのいいものから尖ったものまで幅広く取り揃えています。
https://www.nomurakougei.co.jp/achievements/all

乃村工藝社のプランナーの”ありのまま”を社外に向けて発信していく、この「ノムログ」。
社内にいると、「私は敵わないな…」と思うくらい個性的で強烈な人ばかりなので、
皆さんに知っていただけるのが楽しみです。

(PHOTO by Hideki Sato)

The Corner Shop – How to make a market –

イギリスの街角にあるコーナーショップ。そんなどこの街角にもあるような店舗の、什器レイアウトや動線、サインやPOP 、VMDや商品陳列、また、店主やスタッフとの何気ない会話など、実店舗には、見本市にも応用できるような有効な要素が数多く詰まっています。昨年の「For Here or To Go?」を進化させた、インテリア ライフスタイル展史上初となる2年連続のアトリウム特別企画。商品のバイイングはもちろん、店舗そのもののスペシャリストでもある、methodの山田遊氏率いるディレクションチームが、アトリウムを一つの街角や店舗に見立てることで、来場者にとって理想となるような商談の場を、さらに更新していく試みを行いました。
https://interiorlifestyle-tokyo.jp.messefrankfurt.com/tokyo/ja/programme-events.html
※ご注意
・この告知で掲載しているウェブサイトのアドレスについては、当ページ作成時点のものです。
・ウェブサイトのアドレスについては廃止や変更されることがあります。
最新のアドレスについては、ご自身でご確認ください。

次回、伝統文化と地域活性化について
引き続き山田遊さんにお話をうかがいます。
お楽しみに!

※インテリア ライフスタイル展 アトリウム特別企画「The Corner Shop – How to make a market-」は終了しています。

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下國 由貴

下國 由貴

Glo-calプランナー
ハコからモノまで、globalにlocalに企画します☆

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