- text and edit by
- 下國 由貴
2023年、今年はうさぎ年。
前回の対談シリーズからずいぶん投稿ができておらず、一年経ってしまいました。
これまでバイヤーの株式会社method山田遊さん、奈良国立博物館 学芸員の中川あやさん、美術デザイナーの山口友里さんと対談させて頂きましたが、今回は現在進行中のミュージアムプロジェクトをご紹介します。
※これまでの対談ブログはこちら
https://www.nomlog.nomurakougei.co.jp/member/detail/12/
空間をつくる、展示をつくるに留まらず、オリジナルのミュージアムグッズまでつくるとは…
乃村工藝社のプランナーが携わる仕事の幅広さ、その一端をご紹介いたします。
天然記念物アマミノクロウサギの研究飼育施設ができます
2021年、コロナ真っただ中で、ある展示施設をつくるコンペが行われました。
場所は、鹿児島県奄美大島にある大和村(やまとそん)。
奄美大島と徳之島にしか生息していない絶滅危惧種であり、日本の特別天然記念物にも指定されているアマミノクロウサギの研究飼育施設です。
天然記念物 アマミノクロウサギ
施設建設予定地周辺(下國撮影)
【アマミノクロウサギ】
分類:ウサギ目 ウサギ科 アマミノクロウサギ 学名 Pentalagus furnessi 絶滅危惧種IB類
分布:鹿児島県奄美大島と徳之島の2島にのみ分布。
個体数:奄美大島、徳之島で合わせて3万9,162~1万1,549頭(2021年時点)とされています。
2003年頃は推定5,000頭だったのが、クロウサギを捕食するマングースや野生化した猫(ノネコ)の防除などにより、生息環境が改善されて数を増やしています。
一方で、夜道に飛び出してきたりすることで、車に轢かれる「ロードキル」が発生するなど、人間生活との共存バランスが崩れてきています。
特徴:体重は1,300~2,700g(2ℓのペットボトルもしくはMacbook pro16インチくらいの重さ)
頭の先からお尻まで胴長41~51㎝くらいで、夜行性です。
ペットとして多く飼育されているカイウサギとは種が別で、原始的な形質を持った、学術的にも重要な種なのです。
大和村野生生物保護条例により、大和村内での捕獲等は禁止されており、鳥獣保護法、種の保存法、文化財保護法等の上位法律の上からも守るべき生き物として位置づけられています。
よって、この施設では野生の子を捕獲するのではなく、交通事故、他の動物などにより受傷した子を保護し、治療と時間をかけたリハビリを行い、野生に戻れるまで守り飼育していきます。
飼育下のアマミノクロウサギを観察し、生活リズムは?餌の嗜好性は?運動能力ってどれくらいあるの?など、謎多きアマミノクロウサギの生態や人との関わりについて、感性を刺激しながら学べる世界唯一のミュージアム(になる予定です)。
施設に関するお話は、これから徐々に公開されていくので楽しみにお待ちください。
奄美大島の人々とアマミノクロウサギの関係性
展示やグッズの開発に向けて、奄美大島、大和村の良いモノ探し、面白い取り組みをしている仲間探しが始まりました。
コロナもあり、頻繁に島に通うことができないのがもどかしくもありつつ、タイミングを見つけて集中的に島内リサーチ、事業者さんの元でお話を聞く機会をいただきました。
(ヒアリングにご参加頂いた事業者の皆さん、お忙しいなか、お時間をいただいてありがとうございました!)
雨が多い奄美大島。貴重な晴れの海!
海は眺めれど、入水出来ていないのでいつか…
畑で作られている様々な島野菜やハーブ!
大和村名産のタンカンやすももを使った商品!
間近で見ても本物と見間違う、木製の虫標本!
手の平に乗せてもかわいい!
アマミノクロウサギについて調査していると、奄美の人々にとってアマミノクロウサギは身近なようで、ちょっと遠い存在であることも見えてきました。
森に住み、夜行性のアマミノクロウサギは昼間に見かけることはほとんどありません。森のナイトツアーに参加する観光客と違って、日常生活をしている島民の方々(とくにお子さん)は夜は家で休んでいますし、島の街なかに住んでいると、“夜の森”は距離的にも心理的にも遠いもの。
よく分からない、遠い存在の生き物を守ろう!と言われても、ピンと来ない結果、保護する気持ちが生まれにくいのは当たり前です。
しかし、世界中どこを探しても、奄美大島と徳之島にしかいないアマミノクロウサギと共に暮らしているという文化そのものが、いかに尊いものか改めて知って頂きたい。
アマミノクロウサギと人間、自然環境の関係の結び直しを考えていきたいと私は思っています。
アマミノクロウサギ発見!夜道は危険です
あ!!おトイレ中でした。ごめんね
これはアマミノクロウサギのフン!
こちらも貴重なアマミイシカワガエル
どうしてミュージアムグッズをつくるの?
ミュージアムが持つ役割の一つに「学び・ふるさとの誇りを知る場になること」があると思います。展示を見るだけでなく、施設の運営やイベントに参加し、皆でふるさとを盛り上げていくきっかけをつくっていけることも醍醐味です。
アマミノクロウサギ研究飼育施設においても例外ではなく、大和村役場の皆さんは、この施設にできるだけ多くの奄美大島の方々、奄美大島に観光に来られる方を始めとした「奄美大島を愛する人」に関わってもらいたい、という熱い想いをお持ちです。
で、あれば。
展示づくりはもとより、ミュージアムにはショップもできるため、
「グッズも、アマミノクロウサギを愛する皆さん、奄美大島を愛する皆さんでつくりませんか?」
そんな風にミュージアムグッズ、アマミノクロウサギグッズづくりをご提案しました。
今回のグッズづくりの目的は3つ。
- アマミノクロウサギ飼育研究施設を新設することを知ってもらおう
- 大和村の方々、奄美大島の方々がアマミノクロウサギに親しむきっかけを増やそう
- 今回のグッズづくりを地域の取組として持続可能・拡大していく事業の第一歩にしよう
今回の飼育研究施設は体験ミュージアム的な役割を持っています。
そこを地域の皆さんと育てていきたい。
販売するグッズの多くは、地域の人の手によるもので、売れたら地域が嬉しい。
嬉しいからもっと良い商品をつくるようになる、もっと買ってもらえるようになる。
地域の経済が活性化し、継続的に稼げるようになり、地域の資産が拡大していく…。
ミュージアムができることで、地域の経済が活性化する好循環を生んでいく挑戦もしてみようと始まったのです。
ミュージアムグッズを生み出し、育てていくためのプレ販売会開催
ミュージアムの完成は2025年とちょっと先になります。
オープンに向けて機運醸成をするためのミュージアムグッズづくりですが、目標があると頑張れるのが世の常です。
挑戦の一つ目のゴールとして「プレ販売会」を開催します。
アマミノクロウサギ×○○をテーマにした、様々な個性的なグッズを大和村の方々、クロウサギを愛する方々と開発してきました。開催前なので内容はまだ語れません。
完成された完璧なものづくりではありません。
地域の皆さんと生み出し、育てていくプロセスから追いかけられる、なかなか珍しいミュージアムグッズの世界。
現地にお越し頂くことはもちろん、SNSを通してアマミノクロウサギの研究飼育施設の立ち上げに興味関心を持っていただける方が増えると嬉しいです。
期間限定!アマミノクロウサギ ミュージアムグッズのプレ販売会開催
2022年3/3(金)~3/5(日)9:00~16:30(最終日は16:00まで)
会場:奄美大島世界遺産センター エントランス
主催:大和村役場企画観光課 協力:奄美大島世界遺産センター
運営:株式会社乃村工藝社
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