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- サトウ ヒデキ
台風一過に想うコト
※ 大型台風19号通過後、いつもの散策コースの浜(右上)は濁流に分断され渡れなくなっていた(2019.10.13)
「天高く馬肥ゆる秋」… 涼しくなり食欲モリモリで、冬に向けて体内脂肪を蓄積中のヒデキです。
せっかく夏に向けてシェイプアップした身体もこの季節には元通り、毎年この繰り返しです(汗)
という自虐ネタで始まりましたが、こんなニュアンスでよく引用される「天高く馬肥ゆる秋」という言葉。元々は、「馬が肥える季節になると、敵が襲ってくるから気をつけろ!」という中国の故事由来の言葉なのだとか。冬期、極寒となり食物が得られない地に住む騎馬民族『匈奴(きょうど)』が、春夏に生い茂った草をいっぱい食べて体力をつけた馬に乗って、冬の食料にと秋の収穫を奪いにやってくることを警戒する「秋高塞馬肥」という漢語が語源だそうです。
現代の日本には、秋に襲ってくる騎馬民族はいないと信じていますが、近年、大型の台風や大雨など自然災害に襲われ、各地で甚大な被害が発生したことは、皆さんの記憶にも新しいと思います。
(被害に遭われた地域の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます)
ノムログ開始から、漂着物をメインにお話を進めてきた『ゆるゆる渚歩記』の第3話・episode3は、この自然災害と少し関係のあるお話から進めたいと思います。
4turtles
突然ですが、我が家には4匹のカメがいます。
※チビ2匹は、まだサイズの大きい先輩カメとの共同生活に不安があるので、普段は別の水槽で暮らしています
なんと、この子たち4匹全て、いつもの浜辺散歩しているときにみつけた『漂流&漂着物』なのです!
4匹とも出会ったのは大雨や台風が通過した数日後のこと。最後にウチにやって来た子(上写真右下)は、まさに、冒頭の台風19号による相模川の増水で流されてきたようです。
どの子も発見時は、その年に生まればかりと思われる赤ちゃんカメだったので、遊泳力がまだ弱く、水嵩や勢いを増した流れに逆らえずに、上流部の湿地や小川から流されてきたのでしょう。そのままでは海に流されて死んでしまうか、トンビやカラスなどの餌食になってしまうことがわかっていたので放ってはおけず、我が家で保護することにしたのです。だって、生きもの好きで小学校の6年間ずっと飼育委員(いきもの係)をしていたワタシですから。
1st turtle
最初の1匹に出会ったのは、2年前の2017年5月、大雨で増水した河口を500円玉サイズのチビカメが流されているところを救出しました。ウチに連れて帰ってから気が付いたのですが、この子は左の後脚がありませんでした。大海を目前にした場所だったので、あのまま流されていれば、命はそう長くはなかったでしょう。
3本脚でも逞しく長生きして欲しいと「三駆寿(サンクス)♂」と名付けしました。現在、2度の冬眠を耐え抜き元気に暮らしています。
※五百円玉サイズだった発見当時のサンクス。自宅にあったガチャのフィギュア(写真右)と奇しくも同サイズ!
2nd turtle
2匹目は、その1年5か月後、2018年10月の台風通過後でした。河口の堤防でひっくり返って動けなくなっているところを見つけました。裏返しで発見されたので「ウララ♀」と命名。名前をつけるときは、やはりいつものプランニング脳が動き出して、何らかの意味付けを考えてしまいます。
※発見時、右写真のようにひっくり返っていたウララ。動いていなかったので「死んでいるのか?」と
謎の行動
ウララを自宅へと連れて帰り、成長して大きくなったサンクスと同じ水槽の中に入れてみたときのこと。
小さなウララがいじめられないか心配で見守っていたのですが、逆にカラダの大きなサンクスの方がビビッてしまいました(笑)多分、サンクスは生まれてこの方、自分と同じカメに出会ったことがなかったからでしょう。はじめはウララ後方の離れた位置から恐る恐る様子を伺っていたサンクス。未知の生物に戸惑いながらも徐々に馴れ、しばらくすると今までに見たこともない不思議な行動をとり始めたのです。
※はじめはビビッていたサンクス、ウララの存在に慣れてくると謎の行動をとり始めた!
そーっとウララに近づきながら、両方の前脚を正面にまっすぐに伸ばし、オスの特徴でもある長い爪で、「コショコショ」とウララを撫でるしぐさを繰り返しました。「サンクスよ、お前はいったい何をおっぱじめたのだ、ビビッてオカシクなってしまったのか?」初めて見る不思議な挙動にワタシは動揺を隠せませんでした。
で、ググってみると、なんとミドリガメ特有の求愛行動だったのです。人生で(亀生?)初対面のカメ(しかもまだ幼い女子!)にいきなりプロポーズするなんて、「やるな、サンクス!」 一年経った現在でも。大好き♡コショコショは続いていますが、ウララは「ウザいのよ!」とサンクスを文字通り足蹴にして全く相手にしません(笑)こんなカメの行動を知ることが出来たのも、身近においてこその発見でした。
3rd&4th turtles
3匹目は、今年2019年5月の大雨の数日後、4匹目は先にお話しした通り同年10月に関東を襲った台風19号通過後のことです。2匹の名前は発見した月から「メイ」と「オクト」と暫定で呼んでいます。暫定というのは雌雄未確認であり、名づけの決め手に欠けているからです。
※5月発見のメイは多分生まれたばかり、甲羅もまだ柔らかい状態(左)10月発見のオクトは少し成長した状態で流れてきた(右)
竜宮城?
河川の勢いや水嵩が増す大雨や台風通過後には、生きたまま流されてくる仔ガメたちだけではなく、亡骸で浜にたどり着いたカメやその他の生物もたくさん見てきました。大海に流され命を落とした生きものも数多くいることでしょう。自然災害の影響を被っているのは人間だけでなく、自然界に暮らす生きものたちも同様のようです。
よく、「カメが大きくなったら、恩返しに竜宮城に連れて行ってもらえるね」と冗談を言われますが、この子たちはウミガメの仲間ではないので、残念ながら乙姫様には逢えないでしょう(チッ!)
我が家に保護された仔ガメたちはいずれも、一般的に『ミドリガメ』と呼ばれる北米産のミシシッピアカミミガメという種類の淡水カメです。本来は日本の自然環境にいてはいけない外来種ですが、このブログの主旨とはズレてしまうので、ここでは外来種問題について言及はしないことにします。
縁あってワタシのもとへとやってきた命です。里親として、このカメたちが大きくなっても、最後まで面倒を見てやりたいと思います。
※ミシシッピアカミミガメは『特定外来生物』には指定されていません。連れて帰ることも飼育することについても特に問題がないことを確認しています。
水族館が好き♡
元いきもの係(現いきもの係でもありますが)のワタシとしては、彼らがストレスなく、幸せに暮らしてもらえる良い環境を整えてあげたいなと常々思っています。そんなとき、思い出すのはワタシが一番好きな施設でもある『水族館』です。
子どもの頃から現在に至るまで、ず~っと好きな施設第1位の座を保ち続けている水族館。
建築学専攻の大学の卒業設計は、もちろん水族館でした。この業界に入ったのも、空間やモノづくりが好きだったこと、いつか水族館の仕事に関わることができるもしれないという動機があったからです。
海に潜ることも
また、魚たちが暮らす本当の海の中が見たくて、30年余りスキューバダイビングを続けています。
国内をはじめ、海外各地の海を旅しました。海の中のお話については、ワタシが撮影した水中写真とともに、いつかこのノムログで取り上げて紹介したいと思っています。
※モルディブ・アリ環礁のドロップオフでやっと出逢えた、憧れのジンベイザメ
※パラオの有名ポイント・ブルーコーナーでは、バラクーダの群れに囲まれ幸せを感じる
『水族館づくり』に向けて
おかげさまで微力ではありますが、これまでに培ったミュージアムづくりのノウハウやフィールド活動の経験を生かし、展示プランニングの分野において、現在は各地の様々な水族館や水産系ミュージアムづくりの一翼を担うお仕事につなげることができています。
個人的な意見ですが、水族館の展示で大事にしたいことは、変わった見せ方やコアな情報提供そのものではなく、魚たちの生き生きとした姿や自然環境下に近い生態に触れられる瞬間であり、その素晴らしさに気付けるきっかけづくりだとワタシは思っています。自然界の水中に潜ればそれらに触れる機会は多いのですが、誰もが海や川の中、生きものが暮らすフィールドに行けるワケではないのですから。
水族館で展示される魚や水棲生物たちに一番近く、理解しているのは彼らを日々世話している飼育員の方々です。
ワタシもその立場になってみて、自ら生きものの命を預かり、生きものたちの気持ちになって飼育環境を整えながら世話をする。そういった体験の一つひとつの気づきが、生き生きとした姿を魅せる水族館の展示プランニングに生きる要素として未来につなげればと思う今日この頃です。
これからも、素敵な水族館体験をはじめとする環境系ミュージアムのお手伝いができる展示屋でいられるよう、自然環境に生きる彼らを間近に観察できるスキューバダイビングや渚歩きなどのフィールド活動、そしていきもの係の経験を通じて、自然や生きものたちから何かを感じ、察することのできる眼を常にもっていたいと考えています。
次回の「ゆるゆる渚歩記」は、海岸散歩で見つけたモノたちをいろいろと紹介していこうと思っています、お楽しみに!
※我が家の“いきもの係”は、カメ以外に金魚たちのお世話もしています
(文章&写真 サトウヒデキ)
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『ヒデキのゆるゆる渚歩記』 back number はこちら!
ep8 「違和感を探せ!」クイズ編2 ep7「コレなに?」クイズ編 ep6「コロナ禍の浜辺」
ep5「漂着ゴミ図鑑」 ep4「いきもの図鑑」 ep3「自然感察眼」 ep2「ボトルメッセージ」
ep1「海岸ミュージアム」
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テクニカルディレクター(いろいろ擬態中)
G坂本並みの守備範囲と打撃力