- text and edit by
- 井部 玲子
例年より遅れた梅雨入り直後の、晴れ渡った土曜日。乃村工藝社の地域デザインR&Dチームのメンバーが小田原市根府川で「親子で農園ランチ&甘夏を使ったワークショップ」と「甘夏キャンドルナイト」をおこないました。本稿ではイベントの様子をレポートします。
地域の「あたりまえ」を価値に
私たち地域デザインR&Dは、「地域の『あたりまえ』を価値に変え、地域に『賑わい』を生み出す」をミッションにクリエイティブの力を活かしたコミュニティづくりにチャレンジしています。
根府川は柑橘栽培が盛んで季節ごとに果樹が実をつけます。レモンやミカン類など、道端で農家さんが無人販売をおこなっていたり、魚屋さんで魚を買ったらおまけに頂いたり、という土地柄で、そもそも地元の方たちはわざわざ買わなくても果樹のある生活を送っているそうです。東京から根府川へ訪れると感じる豊かな自然に囲まれたこの環境の素晴らしさを、もっと多くの人に知ってほしい、地域の方にはあたりまえの地元の良さを感じてほしい、と考えました。
今回イベントの会場としたWorkcation House U (以下、Uと表記)は、根府川の海と山の間にあるワーケーション施設です。1953年に片浦村役場として建てられ、その後小田原市役所の支所として使われていた木造の建物を、株式会社文祥堂さんが当時の面影を残したまま、2022年にワーケーション施設として生まれ変わらせ運営しています。
運営メンバーと共に、根府川に住む人々が大事に思ってきたこの場所で、地域の子どもたちと都会の子どもたちとが「地域のあたりまえ」である柑橘とその周りの自然をコンテンツに交流できるイベントを企画しました。
親子で農園ランチ&甘夏ワークショップ
柑橘農園でおにぎりを食べ、甘夏の収穫を体験し、その甘夏の果実を使ったスイーツづくりと甘夏の皮を使ったキャンドルづくりをする、盛りだくさんのワークショップです。Uに集合し、それぞれ名前やイラストを描いてオリジナルの缶バッジをつくり、歩いて10分ほどのところにある柑橘畑のある山へ向かいました。
柑橘畑の山の急坂を登って振り向くと、そこには相模湾の素晴らしい景色が広がります。素晴らしい景色を眺めながら、こだわりの釜炊きご飯でつくったおにぎりと串焼きのランチタイム。柑橘畑の持ち主、はれやか農園の槇さんは、大学卒業後小田原へ移住して農業を学び、2023年にご自身の農園をオープンしました。昼食後、子どもたちは槇さんから柑橘畑についてお話を聞いていました。
甘夏の収穫体験では、色も大きさもそれぞれの甘夏がなる木から、自分好みの果実を見つけて、一生懸命手を伸ばして収穫しました。収穫した中からひとつを選んで、タルトのデコレーション・キャンドルづくりに移ります。
甘夏タルトのワークショップ講師はフードコーディネーターの山本咲さん。地元小田原出身で、地域の柑橘に精通しています。今回は、甘夏のトッピングに合うタルト台を焼いていただき、そこに子どもたちが果実をくりぬいてトッピングしました。また、くりぬいたときに出た果汁もゼリーにしてさらにタルトを飾ります。甘酸っぱい甘夏の香りが広がりました。
甘夏タルトのためにくりぬいた皮の部分は、洗って甘夏キャンドルをつくりました。甘夏の皮にキャンドルの芯材を入れ、溶かしたソイワックスを注ぎます。ソイワックスは大豆油を主原料とした天然植物性ワックスで環境負荷も低く、ススも出にくいキャンドルが楽しめます。柑橘畑で集めたレモンの葉っぱをキャンドルに入れたり、お花を飾ったり、思い思いのキャンドルをつくりました。キャンドルが固まるのを待つ間に、甘夏タルトとお茶でおやつタイムです。一生懸命くりぬいた甘夏がトッピングされたおいしいタルトをみんな笑顔で頂きました。おやつが終わるころにはキャンドルが固まり、それぞれの甘夏キャンドルをお土産にワークショップを終えました。
甘夏キャンドルナイト
夏至に各地で行われている、キャンドルに火を灯して電気を使わずスローな夜を過ごす催し「キャンドルナイト」。このムーブメントに共感して企画したのは、根府川地域で6月に収穫できる「甘夏」を使った、ここならではのキャンドルナイトです。いつもは会員や事前登録をしたビジネスマンが使っているスペースを地域に開き、どなたでも自由に中に入ってゆったりとした時間を過ごせるようにしました。甘夏キャンドルに火を灯すと、写真を撮ったり、良い香りを楽しんだり、ゆったりとしたBGMが流れる中、ゆっくりと暮れていく夏至の夜を楽しむ様子が見られました。
Uの前の広場ではお酒やおつまみが販売され、子どもたちにはわたあめが提供されました。外では子どもたちが遊びまわり、海の見える2階ではキャンドルの光だけの薄暗いなかで大人たちが談笑する姿がありました。
サステナブルな地域づくりに向けて
今回のイベントは、東京や埼玉から来ていただいた方、地域にお住まいの方、それぞれがご参加いただいたことで、ここならではの交流が生まれたように思います。お昼のワークショップでは、一緒にワークショップに参加した年齢のバラバラな子どもたちが、別れ際に手を振りあっている姿が印象的でした。ここでしかできない体験を通して根府川の魅力を知っていただき、地域の方たちには地元の魅力を再発見していただける機会となったのではと考えています。地域のあたりまえを価値に変え、関係人口が増えることでそこからサステナブルな地域づくりにつながることを期待しつつ、今後も活動を続けていきます。
●冬至に合わせて12月に根府川で収穫できるレモンを使った「檸檬狩り&キャンドルづくりワークショップ」と「檸檬キャンドルナイト」を行う予定です。
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