- text and edit by
- 田中 摂
今年から始まったノムログ編集部オリジナル企画「新・空間歳時記をつくる」。
「空間と体験」について日々考えているノムログ編集部のメンバーたちが、時代に合った手法で、季節の行事の空間体験を実践し、考察することで、新たな空間体験を探ろうという本企画(スタート経緯はこちら)。
今回は夏ということで、「オンライン夏合宿」を企画してみました。まずは企画編として実施までの過程をご紹介します。
■第1弾の「オンライン花見」で見えたこと
もともとリアルでの空間体験が大好きなノムログ編集部メンバーたち。企画がスタートしたころは、いろんな形でのお花見を考えていたのですが、新型コロナウィルス感染症の影響もあり、花見の起源を辿りつつ、時代に即した新しい手法で花見を探ろうということから、オンライン花見を実施しました(「オンライン花見」の実施レポートはこちら)
コロナ禍の影響もあり、WEB会議やオンライン飲み会が浸透したこともあって、オンライン花見をやってみた方も多いかと思います。実際にやってみた方はどうだったでしょうか?ノムログ編集部の「オンライン花見」では、それぞれのメンバーが想う「花見の環境」を自宅で演出して紹介しあったり、「花」をテーマに短歌を詠んだり、桜の名所を訪れたときの話を共有して旅の追体験をするなどのプログラムを組んで実践してみました。
終わってみると、ただのオンライン飲み会ではない面白さがあったという満足感や、こんなにも「花見」について考えたことがなかったというやりがいは共有されました。しかし、「何かが足りない……」、とりわけ「一体感を得られているか」ということに対して全員が物足りなさを感じ、“場”を共有しているときの一体感とはなんなのかを追求していこうという課題が残りました(考察レポートはこちら)。
結果、新空間歳時記「夏」の企画には、「オンライン花見」では感じられなかった「一体感の醸成」が大きなチャレンジとして加わりました。
■「一体感をどう醸成するか」
新空間歳時記として「夏らしいイベント」でどんなプログラムをすることが良い実験になるのか、オンライン花見終了後から、さっそく企画がスタートしました。「夏らしさ」と「一体感の醸成」、さらにはノムログあるいは乃村工藝社がやる意義は、といったところまで議論が白熱。そのなかで、緊急事態宣言解除後も新型コロナウィルス感染症は当分予断を許さないものであること、感染予防第一とした新しい生活様式での実践が大前提であることから、「夏」企画も完全オンラインでの実践を決めました。「空間と体験」を追求する編集部が、その知見や感性を生かして、オンライン上でどう「一体感を醸成」するのか検討し、それを実験してみることにしたのです。その検討ポイントが以下です。
1.時間の流れをデザインする
2.味覚・嗅覚・触覚など視覚・聴覚以外の感覚もフルに共有する
3.オンラインのメリットを使いつつ、事前準備で「盛り上がり度」をあげる
1.時間の流れをデザインする
リアルな集いだと、お店に近づいて来た時のわくわく感や、帰り道の余韻を楽しむ感覚があります。一方、オンラインの集いだと突然始まり、さらに終了の際にぶつっと切れたあとに寂しさを感じることはないでしょうか。そこで開始前、終了後の時間の流れのデザインが重要であると考えました。
⇩岡本編集部員が、最初に提案してくれた、時間の流れをデザインする資料
2.味覚・嗅覚・触覚など視覚・聴覚以外の感覚もフルに共有する
「オンライン花見」で一体感が足りなかったのは、五感のうちほぼ視覚・聴覚しか使わなかったことも要因のひとつかと考えました。リアルな場に集ったときの、例えば、おいしいものを一緒に食べた時の味、異国の地を訪れたときの独特の香り、ふかふかのラグに座った時の座り心地、そんな味覚や嗅覚や触覚も共有することで、一体感が得らえるのではないか、という仮説を立てました。よって、五感をフル稼働しようということが決まりました。
3.オンラインのメリットを使いつつ、事前準備で「盛り上がり度」をあげる
事前準備をすることなく、その時間になったらパソコンの前に座って、参加できるのはオンラインの気軽さです。ですが、参加するメンバーひとりひとりが深く考え、事前準備した上で参加すると、その時間の濃密さや盛り上がりは上がるというのが、編集部の見解でした。そこで「夏」企画では、オンラインならではの画面共有やチャットでのシェアも最大限生かしつつ、より事前準備に力をいれようということになりました。
⇩横田編集部員が提案した、背景とBGMをタイミングを合わせて一斉にテレポーテーションする案
■夏の風物詩と社会人にとって一体感を醸成する意義のある「夏の行事」を考えてみる
つづいて、新空間歳時記なので今回は「夏らしい」企画をしなくてはなりません。「夏」と言えばなんでしょうか。花火、盆踊り、七夕、夏祭り、流しそうめん、海水浴、縁日……いろいろありますね。実験であればなんでも良いのではないか、という意見もありながら、夏のイベントで一体感を醸成した先に得られるものが何だろうか?
そんな問いとの反芻で、この議論に時間がかかりました。議論しながら検討していった案を一部ご紹介します。 まずは「夏の風物詩」を挙げながら整理です。そこからノムログらしい夏のイベント案を出していきました。
⇩森田編集部員の資料「夏の風物詩」
⇩神田編集部員の提案「そうめんの食べ比べでご当地ネタや味覚の共有」
⇩ヒデキ編集部員の提案「ホタル狩りの夕べ。オンラインでホタルを題材にした各自のストーリーを楽しむ」
⇩岡本編集部員の提案「オンライン座禅で、夏の風景を思い出してみる」
⇩松本編集部員の「オンライン夏祭り屋台。自分自身の日常やプライベートをたたき売り!?」
ほかにもVRゴーグルを使ったVR流しそうめんや、WEB上で共有するオンラインラジオ体操、いろいろな案が出ました。やってみればどれも楽しそうではあります。結果、最後に焦点となったのは、一体感を必要とする夏のシーンってなんだろうか、という問いでした。
■一体感を得る必要がある夏のイベント「オンライン夏合宿」
社会人のみなさんが会社で一体感を得る必要がある夏のシーンはなんでしょうか。学生のみなさんがゼミやサークルのみんなと一体感を得る必要がある夏のシーンはなんでしょうか。そんなことも含めて考えてみると、一体感が必要な夏のシーンとして出たのが「夏合宿」。合宿の意味は、いろいろ事例や考察を見ていくと、どうやらチームビルディングの成功循環をつくるためにあるもので、人間関係の構築や、意思統一、アクションの改善などが目的に挙げられます。そうして考えてみると、お花見は、新人さんを迎えての歓迎や新しい部署での人間関係の構築の第一フェーズにありますね。ノムログ編集部の場合、ちょうどノムログ開始から一周年。人間関係のさらなる質の向上と、最初の期待感や振り返りを通じて改めて次の一年に向けた意思統一を図る。そんな建付けにすると、一体感を醸成する意義がありそうだという見解に至りました。
かくして、「オンライン夏合宿」は、「夏の風物詩」をふんだんに取り入れながら、どこまで「夏合宿」というイベントで得られる一体感を醸成できるか、という挑戦にまとまったのでした。
準備と実験の結果はいかに。後日の『オンライン夏合宿ーやってみました編』をお楽しみに。
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NOMLAB マネージャー
出る杭を伸ばすマネジメント