- text and edit by
- 岡本 悠雅
ノムログ編集部オリジナル企画、「新・空間歳時記をつくる」。
この企画は、ノムログ編集部のメンバーたちが時代に合った手法で季節の行事の空間体験を実践・考察することで、「新たな空間体験の可能性を探る」というものです。本企画スタートの経緯はこちら。
今回は、前回の「オンライン夏合宿で一体感は醸成されるか-企画編-」に続き、体験編をレポートさせていただきます。
過去の記事は以下。
【Vol.1】オンラインお花見(企画・体験編/考察編)
【Vol.2】オンライン夏合宿(企画編)
オンライン夏合宿のポイント
企画編でも触れましたが、今回のオンライン夏合宿で一体感を醸成すべく注力したポイントは以下の3つです。
1、時間の流れをデザインする
2、感覚(五感)をフルで共有する
3、事前準備から盛り上げる
これらについて、具体的にどのような取り組みをしたかをご説明します。
1、時間の流れをデザインする
今回の企画では、オンラインでは感じにくい、体験前後の期待感や余韻を感じるために
予め以下のようなタイムスケジュールを設けました。
表のとおり、13時~17時の間がノムログ運営について振り返ったり来年の目標を立てたりするメインコンテンツの時間です。
そのメインコンテンツの前に、みんなでそうめんをすするランチタイムを、後に、夏を感じながら気楽にオンライン夏合宿の感想を述べる、打ち上げのような時間を設けることで、実験的に期待感と余韻をデザインしてみることにしました。
もしこれが成功すれば、オンライン合宿だと移動時間が省略できる分、その時間をメンバーの期待感と余韻の醸成の時間として使うことが有効だといえるはずです。
また、定期的に休憩を入れることで、長時間のオンライン会議でも集中力が保てるような工夫もしてみました。
2、感覚(五感)をフルで共有する
前回のオンライン花見では視覚と聴覚のみの共有だったのに対し、
今回のオンライン夏合宿では、夏を感じられる映像や音に加え、味や香りにも注力してみました。
茣蓙や蚊取り線香、そうめんや駄菓子など、編集部メンバーが話し合い選定した夏を感じる香りや味がする様々なアイテム
上記写真のものに加え、風鈴の音や虫の音をリミックスしたBGMを作ったり、夏を感じるような背景画像を選定したりと、もちろん視覚や聴覚の共有にもこだわりました。
これらの効果を会議中や休憩中に全員で感じ、共有することで、物理的距離のあるオンライン会議でも一体感が醸成できるのではないかという試みです。
3、事前準備から盛り上げる
オンライン花見時の感想では、準備物が一体感の醸成に大きな影響を与えたという意見が多く、
今回はさらに準備物の企画に注力することにしました。
具体的な方法としては、参加メンバーを「嗅覚チーム」「聴覚チーム」「味覚チーム」…のようにメンバー分けをすることで「夏を感じる味や臭い、音は何か」ということを突き詰めて考え、考えた分だけ合宿の体験価値が上がるのではないかという、仮説の実証を試みました。
■いざ体験!!
本題の前に、まずはそうめんでアイスブレイク
最初は味覚チーム(岡崎編集部員/神田編集部員)が用意した、色によって味が異なる5色のカラフルなおそうめん(写真左)をランチタイムにみんなですすりながら、ワイワイとオンライン合宿をスタートさせました。
梅と大葉味のそうめんを選んだ森田編集部員(写真真ん中)や、家族で食べるということで全色茹でたという横田編集部員(写真右)を始め、編集部のメンバーからは「茹でている時から香りがした!!」「〇〇色が一番好きかも!!」などと、共通の食事をしていることから生まれる会話の盛り上がりがあり、普通にオンラインでランチ会をするよりもかなり一体感が醸成できていたように感じました。
縁側のような背景に揃えて記念撮影
盛り上がったまま活動の振り返りと目標設定へ
会議は約1時間、タイムスケジュール通り休憩をはさみながら3回行いました。
また、会議の間にも少しでも夏を感じて一体感を得られるよう、視覚・聴覚チーム(横田編集部員・岡本)が時間によって背景とBGMを変える準備をしました。
時間の経過に合わせて、環境音のBGMや背景を変更
メンバーの感想の中には、「背景画像が昼・室内・夕方・屋外と変わっていくだけでも、時間の流れを共有できた(本当なら一日家にいて、PCの前に座っていたら、時間を忘れそうなのに、昼~夕方への時間の流れを感じた)」というものもありました。
休憩時間のコンテンツ
会議のあとの30分休憩では、聴覚チームが用意した音楽を聴きながら全員で瞑想してみたり、味覚チームが用意してくれた水ようかんを食べたりと、各チームが用意した様々なコンテンツを全員で体験してみました。
聴覚・視覚チーム発案の水中BGMを使った瞑想タイム
味覚チームが金沢からお取り寄せしたお中元でおやつタイム
その中でも、全員が一番盛り上がり、一体感が感じられたという声が多かったのが、嗅覚チーム(ヒデキ編集部員・森田編集部員)が用意してくれた「蚊取り線香・香り当てクイズ」でした。
このクイズは、夏の香りの象徴ともいえる蚊取り線香を12種類用意し、それぞれが何の香りかを当てるというものです。一見シンプルなクイズですが、嗅覚チームがヒントを用意してくれていたり、オンラインで物理的距離が離れているにもかかわらず全く同じ香りを嗅いでいるという意外な一体感もあったりと、全員が一体となって盛り上がれる要素が詰まっていました。
通常のオンライン会議などでは、発言者が一人になりがちで喋り始めるのに気を遣ってしまいますが、この時間は各々が香りについて順番も気にせずどんどん意見を述べており、その状態こそがリアル空間での集いに近く一体感を感じるポイントだったのかもしれません。
↑実際の様子を少しだけ(笑)
最後は花火を見ながら
合宿の最後には、背景を花火の動画にして全員でオンライン合宿についての感想を交換し合いました。また、話し合っている最中も、夜空に打ちあがる花火が自然と目に入り、ひとつのイベントが終わっていくようで少し寂しくも心穏やかな気持ちになりました。背景の花火の動画が、個人によってズレていたのも逆によい演出になったのではないかと思います。
オンライン夏合宿を終えて
開催後、メンバーからはこんな意見がありました。
<オンライン夏合宿全体について>
・午後半日を使ったところに集中して取り組む合宿感があり、1時間ワーク+30分休憩のスケジューリングもメリハリがあって良かった。
・1時間実施、30分休憩、というタイムテーブルがとても快適だった。
→ワークショップなども、こういった形で出来れば、より距離を縮めて議論が出来そうだと感じた。
・前回の【花見】での全編を“ゆるい時間”を過ごす設定に対して、今回は、これまでのノムログを振り返って意見を交わすという、“ゆるくないマジメな時間” の過ごし方を取り入れたことも、体験のリアリティに繋がっていると考える。マジメさとゆるさを交互に配置した“緊張と緩和のスケジューリンク” が「夏合宿した〜!」の実感に繋がっていた。
<一体感について>
・オンライン上ではどうしても一人ずつ発言する傾向にあるが、今回のように全員で同じものを食べること、同じ香りを嗅ぐことで、それぞれが重なり合うように感想を言い合う場面が生まれ、同じ空間にいるような感じがした。
・そうめんなどでのイントロ的なところからはじまり、休憩で水中瞑想、水菓子、香りのゲームなど、味覚とBGMなどの聴覚を共有したのは一体感の醸成につながったと感じた。
・背景画像や音源による “時間の流れ” や “場の共有” の感覚は有効だったと思う。
・個性の表現を「シェア」する時代から、全員が同じ方向を向いて「同時に」「同じ体験を」「同じように」体験する欲求が高まっていることを、実感をもって体験できた。
・前回の花見よりも、同じ時間の流れとコンテンツを共有したことが、一体感醸成の成功要因として大きかったと思う。
・オンラインはやはり事前準備が重要で、前回よりも共有できる感覚が増えたことがより一体感に繋がった気がする。
<改良点・懸念点>
・背景画像は、映像や画像を組み合わせて、もっと面白い効果がつくれそうな可能性を感じた。
・BGMを共有する上での課題は、PCのスピーカーでは没入感が演出できない、再生している側から共有しているPCの音量が分からないので調整が難しいということ
・やはり、PCのスペックやネットワーク環境に依存しているので、途端にテンションが落ちてしまったり、疎外感を感じたりすることもある。
次回は、前回の企画編、今回の体験編に続き、「考察編」をお届けする予定ですのでお楽しみに!!
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