- text and edit by
- 横田 智子
コロナ禍でさまざまなイベントが形を変えて開催する中、
今年で4年目を迎えたDESIGNART TOKYOもオンラインでのトークセッションや展示を交えた
New Normalスタイルで開催しています。
「POWER TO THE CREATIVES」をテーマに、文化を再起動するための取組みと位置づけた本年。
展示とリアルな空間の結びつきにフォーカスし、前編は表参道~渋谷エリアをレポートします。
(後編はこちら)
コロナ禍での工夫が見えるイベント開催
10/22(木)、ワールド北青山ビルにてオープニングセレモニーが行われ、2020年のDESIGNART TOKYOが幕を開けました。
メイン会場入口の鮮やかなピンクのグラフィックは、角度によって色が変化する仕様でイベントへの期待感を煽ります。ソーシャルディスタンスが新基準となった今年は、オフィシャルe-バイクに今話題のVanMoof(バンムーフ)が登場。プレスツアーも集団でのバスツアーは開催せず各自が回遊するスタイルで、昨年からの更なるパワーアップとコロナ禍で各会場を回ることへの配慮が感じられました。
インフォメーションセンターであるワールド北青山ビル前に展示されている 特徴的なデザインのVanMoof《S3》&《X3》
メイン会場となるこちらでは、「New Home Office」というタイトルで在宅勤務やリモートワークが広まった背景から、自宅で豊かに過ごす時間を彩る家具の展示が行われています。鮮やかな色合い、手触りの良い張地、植物とのつながりなど、さまざまな視点からステイホームの価値を高める提案がなされています。
名匠アルドロッシの建築×REBOOT=再起動
次に訪れたのは神宮前にある「ジャスマック青山」。こちらはイタリアの巨匠建築家・アルドロッシ氏がデザインし、現在は結婚式場として使われている建物です。普段はなかなか内部を伺い知ることはできないのですが、会場として開放してくださった寛容さのおかげで、充分にインテリアを堪能することができました。展示のタイトルは新型コロナウィルスによって停滞してしまった社会状況に打ち勝つような強いテーマ「REBOOT」=再起動とした、国内外のアーティストが参加するグループ展となっています。
エントランスホールには大きな天窓のドームと地階へ続く螺旋階段が。有機的な曲線と自然光の陰影が、ピンク色の壁面に自然な濃淡を生む美しい空間です。
地階は螺旋階段を中心とした開放的で奥行きのある空間に、ゴールドのディテールデザインが光ります。展示物はそれらのインテリアを尊重するように、背の低いシンプルな什器で構成されています。
展示の中で目を引いたのはクリエイティブユニット「9+1」が富山ガラス工房のガラス作家とコラボレーションした作品展示です。亀井潤さんの作品「A drop of light」は水を注いだ分だけ発光する照明。金属箔が水を感じるセンサーの役割を果たし、手で触れることでもさらに明るくなるという仕掛けになっています。
何でもスイッチでON/OFFができてしまう今、モノと対話するきっかけをつくることで、より人間らしい根源的な生活を思い出させてくれるプロダクトです。
手で触れると内部の金属箔が反応し、より明るくなる仕掛け
アパレル店舗×展示空間
次に訪れたのはhotel koé tokyo。2階のアパレル店舗にて3つの展示を行っています。ここで注目したいのは、常設の店舗にテンポラリーな展示をかけ合わせる空間の作り方です。普段使っている什器をそのまま活用しながら、吊り広告でイベント告知を行う手法で、他の商品と関連するライフスタイル雑貨のように自然な形で展示されているところが印象的です。
INJO JAPANが発表したシリコン製のカップはとても透明度が高く、ガラスのように見えるため、手に取った瞬間にその軽さに驚きます。割れる心配もなく、ピクニックなど屋外での使用やオフィスや外出先にマイグラスを持ち歩く習慣も生まれるかもしれません。
東急プラザ渋谷×めぐり合いが楽しい分散展示
東急プラザ内では複数の展示が随所に置かれた構成になっていて、順番に階をめぐっていくと、ふと開けたパブリックスペースで新しい作品に出合うことができます。複合施設における回遊展示として効果的な手法だと感じます。
ドレープ状の椅子とパーティションの作品―Drapes / NORIKO HASHIDA
砂時計のような形のガラスに砂を入れて遊ぶ―HAFT DESIGN / Daisuke Akiyama
ページをめくる度に映像と音の演出が映し出される―KARAKURI powered by EPL inc.
デジタルの映像と「本をめくる」という行為を融合させた作品では、ボックスの中をのぞき込むように絵本を見ることで、サウンドの指向性が高まり、小部屋にいるような感覚を覚えます。内蔵されたスポットライト型のプロジェクターは意匠性が高く、空間演出への汎用性を感じます。
番外編|コラボレーション展示「dawn」atヒカリエ
DESIGNARTの展示ではありませんが、同じ会場内で開催していたカメラマン・松田恭平氏とジュエリーブランド「moil」のコラボレーション展示「dawn」もご紹介します。人が生まれて死ぬまでの時間軸を光と闇で表現した写真作品と、身近にある日用品から生まれたアートジュエリーとが重なり合うことで生まれる違和感をテーマにしています。
一列に並んだ写真のモデルは0歳から順に年齢が上がり90歳まで、同じ部屋で朝から夕刻までを自然光のみで撮影しており、最初の希望溢れる赤ん坊と朝の光から、次第に時間が刻々と進み、日没後の暗闇にぼんやりと写る老人のリアルな質感が、人生の終盤を感じさせるもの悲しさと同時に、あらゆるものを受け入れる大らかさをも感じさせます。
写真という平面の作品が、時空を感じさせる空間として立ち上がった素晴らしい展示でした。
後編はDESIGNARTの他エリアもめぐっていきます。後編へつづく
DESIGNART TOKYO 2020 情報
http://designart.jp/designarttokyo2020/
会期:2020年10月23日(金) 〜11月3日(火・祝)
会場:表参道・外苑前 / 原宿・明治神宮前 / 渋谷 / 代官山 / 六本木 / 新宿 / 銀座
主催:DESIGNART TOKYO 実行委員会
dawn 展示情報
会期:2020年10月20日(火)~10月25日(日)
場所:Creative Lounge MOV aiiima 2 (shibuyamov.com/space/aiiima/)
時間:12:00 – 20:00 *最終日は18:00まで
*会期は終了しています。
*大阪での巡回展はこちらの期間で開催中です。
2020年11月4日(水)~11月15日(日)
*ご注意ください*
本記事で掲載している展示会およびリンク先のウェブサイトの情報は、当ページ作成時点のものです。
変更されることがありますので、ご了承ください。
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ノムログ編集長
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