ポストコロナに向けた飲食店の未来予測と空間的考察

綿本 有里
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綿本 有里

新型コロナウイルスの流行により外食することへの考え方が大きく変化しました。これを読んでいる皆さまもこれまでと比較して外食する回数が減ったり、店内利用ではなくテイクアウトを選ぶ回数が増えたりした人が多いのでないでしょうか? Go toキャンペーンの実施も影響し少し持ち直しましたが、9月の外食市場規模は依然として昨年と比較して3割近くのマイナス!かなり苦しい状況です。とはいえ、飲食店の存在は多くの人々にとって欠かせない日常の一部であることに変わりはありません。コロナによって顕在化/加速化した飲食店ニーズから推測される、飲食環境の変化について考察していきます。

*ホットペッパーグルメ外食総研/外食市場調査

コロナで強まる飲食ニーズ

外出自粛で市場規模全体が小さくなる中、好調/増加傾向にあった飲食ニーズを4つに分類してみました。
以降ではそれぞれのキーワードについてもう少し深堀していきます。

① クオリティ中食

コロナの影響で外出頻度が減ったことにより、飲食店やスーパーなどで購入した総菜や弁当を家で食べる「中食市場」が拡大し、テイクアウトを実施する飲食店が増加しました。通常商品をBOXに詰めただけの販売スタイルもありますが、単に持ち帰る以外の付加価値提供をしているユニークな取り組みも出てきています。

たとえば、
・高級店の味を低コストで試すことができるランチボックス
・小さな子どもや高齢者がおり長時間家を空けづらい人に向けた本格的なファミリーパーティー用テイクアウト
・子どもと一緒に食育を学べるミールキット
・公園隣接地におけるテイクアウト販売+ピクニックセットのレンタル
などは、コロナに関係なく体験してみたい!と思えるサービスだと思います。

ファミリーレストランなどを筆頭に、従来型の飲食店は店内飲食に注力した店舗フォーマットが基本となりますが、今後新規で作られる飲食店はイートインスペースだけではなく、テイクアウト用パッケージのストックや、ミールキット販売用の冷蔵/冷凍庫、お弁当やデリを扱う陳列用の什器を置くスペースなどが、店舗設計上の基本フォーマットとして一般化すると考えます。少し前にスーパーの中に飲食スペースがある「グローサラント」というスタイルが流行しましたが、今後は飲食店の中にテイクアウト専門のデリコーナー等が併設された逆のスタイルが増えるのではないでしょうか。

② ご褒美外食

コロナ以前より、外食頻度の減少で1回の外食における店選びへのこだわりや期待値が、より一層高まっている印象を受けます。料理やサービス、空間、すべてが複合した特徴的な店舗体験の演出が、非日常感を求める「ご褒美外食」での必須機能として、今後も強まっていくと考えられます。

※オズモール調べ/都内で働く20~49歳女性の「最近の外食事情について」

たとえば、
・シェフの手元を見ながら食事ができるシェフズキッチン
・唯一無二の空間デザインや演出・景色に包まれて食事を楽しむことができる空間体験
・圧倒的な品揃えとバーテンダーのテクニックを楽しめるバー
など、自宅では味わえないプロの味を、上質な空間で味わうことができることこそが外食の一番の楽しみだと私は思います。

中食市場が伸びている中で、飲食店におけるサービスや空間の与える体験性はこれまで以上に重視されると考えられます。飲食店をSNSで探すことも多い時代において、一目見ただけで行ってみたくなるようなSNS映えする空間演出は、店づくりにおける重要なファクターとなるのではないでしょうか。

③ スマートピックアップサービス

コロナ禍では衛生面での意識が高まり、テクノロジーを用いた非接触型の接客が増加しました。

たとえば、
・予約しておいた商品をピックアップできる食品専用ロッカー
・完全キャッシュレス型店舗
などがその例です。

スマホから予約をしてピックアップできるロッカー型コーヒーショップ等のサービスは非接触&クイックなだけでなく、マイオリジナルカスタマイズをワンタップでオーダーできることから食のパーソナライズ化の拡大にも繋がっています。また、完全キャッシュレス化が進むと店舗からレジ機能がなくなり、省人化が進むだけでなく店舗のエントランス機能の在り方まで変化するでしょう。

④ 多目的コワーキング機能

テレワークの広まりでコワーキングカフェのニーズが変化しつつあります。コロナ以前、カフェでのリモートワークといえば、コンセントとネット環境が整備された空間で個人作業に没頭することが多い印象でした。
最近はテレワークの広まりと共に、外出先でのウェブ会議が可能なプライバシーに配慮した新たな「オンラインコミュニケーションの場」が求められています。

たとえば、
・周りを気にせずに話せる電話ブース
・ウェブ会議を気兼ねなくできる半個室型スペース
・カバンや資料を広げながら作業ができる個人用の大きめデスク
など、多様な働き方に即した空間が必要なのではないでしょうか。

これまでは外出時のスキマ時間に利用する人が多かったコワーキングカフェですが、自宅に作業環境のない人が数時間単位で利用するケースも増えています。街中で働くことがニュースタンダードとなっていけば、フリードリンク制の時間貸しをするカフェや昼はコワーク、夜は居酒屋のような二毛作の運営スタイルも拡大していくでしょう。近年オフィス内のコミュニティラウンジの設計などで考えられてきた、「集中」「リラックス」「交流」などの要素を、カフェ空間にも取り込むことで、コワーキングカフェはより多目的に使うことができる便利な空間へと進化することができると思います。

飲食店のニューノーマルを考察する

飲食店のニューノーマルを考察するトライアルとして、上記4つのキーワードを一つの空間イメージにまとめてみます。

昼はカフェ×コワーキングスペース、夜には飲食店として二毛作で運営するほか、テイクアウト専門エリアでは外部から直接受け取り可能なピックアップ窓口を設置。完全キャッシュレス型店舗として、エントランスからレジスペースを排除し、代わりに物販スペースを設けました。店内空間はスタンディング席、テーブル席、個室を一体的に導入し、今後は、更に多様化するワークスタイルやシチュエーションに対応可能な、可変性の高い空間を検討していきます。ポストコロナの飲食店の可能性として、新たなワークスタイルやライフスタイルニーズを取り込めれば、従来の概念、繁閑差やアイドルタイムなどの課題も変化していくのかもしれません。

コロナウイルスの影響は各方面に大きな影響を生みましたが、こんな状況だからこそ生まれる新しい空間の在り方があるはずです。これからの時代に先手を打つようなユニークな飲食空間について、引き続き考えていきたいと思います。

<飲食店を含む弊社商業施設実績はこちら>

https://www.nomurakougei.co.jp/achievements/boutique

今回、飲食店の事業サポートをメインとするグループ会社「TNP」「SQUARE」と「乃村工藝社」のプランナーが1チームとなり、「ウィズコロナ・ポストコロナにおける飲食トレンド情報」をまとめております。ご相談等がございましたら、下記URLよりお気軽にお問合せください。

<グループ会社のご紹介>

TNP:飲食チェーン店の出店計画から施工後のアフターサービスまでトータルでサポート
https://www.tnp-co.jp/
SQUARE:大手飲食チェーンの設計/施工
https://www.square-co.net/

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綿本 有里

綿本 有里

日常系プランナー
空間を通じて、日々の思い出を作る

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