海が見える空間で働く ワーケーション in 和歌山「南紀白浜」Vol.1

岡崎 広子
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岡崎 広子

新型コロナウィルスの影響で「テレワーク」や「在宅勤務」が広まる一方、その言葉や概念に対する違和感が生まれました。当然、コロナ禍での外出自粛は原則ではあるものの、アフターコロナの社会変化を考えると、必ずしも「在宅」である必要があるのだろうか・・・

コロナ禍でのワーク&ライフスタイルの変化に伴い、従来の「場」や「空間」の捉え方が、急速に変わりつつあります。アフターコロナの社会を見据え、その変化を止めない「働き方や生活の多様性」を許容する次世代空間の在り方を探るべく、まずは「ワーケーション」をテーマに取材を進めて参りました。

ワーケーションの定義

インバウンドや観光集客に頼れない中、関心の高まる「ワーケーション」ですが、現段階での定義や解釈は様々なようです。地方に対し、都心でのワーケーションは「シティワーケーション」とも言われるそうです。
ここでは、今回の取材にご協力頂いた(株)KabuK Style「HafH」の解釈を引用したいと思います。

#ワーケーションとは?

「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた新しい言葉。
場所に捉われず働ける現代において、 お気に入りの場所で仕事をすることで、通勤や職場の
ストレスを減らし、日々の充足感をあげ、ワークライフバランスの向上を促す働き方。

*サブスクリプション型コリビングプラットフォーム「HafH」(ハフ:Home away from Home)

「世界を広げる、働き方を。」
毎月定額(光熱費・備品・インターネット費用・敷金・礼金・保証金・家具購入費等の諸費用、及び初期費用がオールインワン)で、全世界に住むことのできるプラットフォームを目指す、新しいサブスクリプション型コリビングプラットフォーム

≫ ワーケーションの聖地:和歌山

言葉の定義もありますが、実際にワーケーションを体験しながら先駆者から学ぼうと、コロナ以前より「ワーケーション」に注力する、和歌山県主催「ワーケーション・リーダーズ・サミット(WLS)」に参加してきました。
「ワーケーションの聖地」と言われる和歌山「南紀白浜」ですが、2015年、総務省のテレワーク事業を機に、今回登壇された企業を筆頭とするIT企業のサテライトオフィス誘致に成功したことで、ワーケーション利用が一気に加速したそうです。

今後、「ワーケーション」が地方課題の解決に繋がるのか、コロナ禍でポテンシャルは高まっていくのか、WLS期間中、「HafH」連携施設であり、会場にもなっていた「ホテル・レジデンス」と「ゲストハウス」を運営される2社への取材を通じ、前編・後編に分けて考察したいと思います。

*「ワーケーション・リーダーズ・サミット in 南紀白浜」の詳細を(株)KabuK Style大瀬良代表が、noteにまとめていらっしゃいます。是非ご一読ください。
大瀬良代表 note:「#ワーケーション」はいったい、なぜ?

まず前編では、白浜で複数の宿泊施設を展開される(株)白浜館の新たな取組についてフォーカスします。
50周年を機にホテルを大規模リニューアルされた経緯、レジデンス業態への新規参入やワーケーション対応など、営業部次長 松平氏にお伺いしました。

SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE

≫ HOTEL SEAMOREのリニューアル経緯

開業当初は、「ホテルハイプレーランド天山閣」の名称で、観覧車があり、婦人会や子供の遠足など地域利用も多い施設だったそうですが、平成元年に「南紀白浜梅樽温泉ホテルシーモア」として、高級路線へシフト。
“梅を漬ける”樽を使用した温泉風呂に部屋食、料亭などが売りの「宿泊者」サービスに特化していたものの、今回のリニューアルで原点回帰し、宿泊者に限らず、誰もが集えるオープンなホテルへと生まれ変わりました。

≫ リニューアルポイントとワーケーション対応

50周年と耐震工事、代替わりを機に
コンセプトからオペレーションまで大幅にリニューアル!

コンセプト:ターミナルホテル
ターゲット:25歳~35歳
ネーミング:白浜から“紀伊を照らす存在に”という意を込め、“KEY TERRACE”に

 *SNSにも多くUPされている大人気の「インフィニティ足湯」

ワーケーション対応の一番のポイントは “海を見ながら働ける”こと。
まず目に入るのは、ラウンジからのオーシャンビューと、水平線と一体化するインフィニティ足湯。圧倒的な自然環境を前に働ける豊かさを体感し、WLS期間中、室内外で海を見ながらテレワークを行う多くの人の姿に、都心で働く意味を改めて考えさせられました。

*海を見ながら仕事ができる「ビジネスルーム」

*Wi-Fi、コンセント以外の必要機能も揃う

*地域に開かれる「オーシャンビューラウンジ」

*地元客にも人気のベーカリーはリニューアルの目玉!ライブキッチンと販売カウンターが一続きに

*大きな吹き抜けになっている「受付」は、もともとは噴水があった場所

*ボルダリングにビリヤードなど、充実の「PLAY ROOM(一部有料)」は、宿泊者以外も利用可能

≫カジュアルで自由!間口の広いオープンな施設へ

幅広い客層が自由に集まるオーシャンビューラウンジに加え、「食事」の提供方法も、いけすご膳料理「いけす円座」、寿司カウンター「すし八咫」とブッフェ専用レストラン「by the ocean」の3つの食事パターンから、予約時に自由に選べるように変更されました。
団体客向けに宴会場や会席料理対応も残しながら、今回、露天風呂付の部屋と部屋食をなくし、施設構成と動線を大きく変えることで、移動距離の短縮や配膳負担の減少など、以前より少ないスタッフ数でも対応可能となったとのこと。

*朝・昼・夜、宿泊者以外も利用可能なブッフェレストラン「by the ocean」

*いけす御膳料理の「いけす円座」

*寿司カウンターの「すし八咫」

*浴衣、アメニティにシャンプーまで自由に選べる!がポイント
「アメニティファニチャー」

「浴衣Lounge」

「Shampoo Bar」

従来の団体客を含む既存顧客を排他せず、個人旅行客ニーズも取り込むことで客層の幅を広げ、運営効率化も図った「環境もターゲットも間口を広げるオープン化」に、次代を見据えたリニューアルの成功要因が伺えました。

SHIRAHAMA KEY TERRACE SEAMORE RESIDENCE

今回、ワーケーション体験させて頂いたレジデンスは、昨夏、「HOTEL SEAMORE」横に開業。
KEY1/KEY2の2棟で構成されるスタッフを常駐させない「レジデンス」業態は、同社にとっても新たな試みであり、コミュニティスペース、キッチンやランドリー、屋外BBQスペースなど、自由に使える共用部を充実させています。

*仕事もできるコミュニティスペース

*キッチンスペース

≫ コロナ禍での「HafH」との連携

開業直後は、関西圏の家族連れや外国人の長期利用などが増えていたものの、コロナの影響を受け、ワーケーション利用を含む平日稼働の強化策として、8月に「HafH」との契約に至ったとのこと。
コロナ禍でも、「HafH」経由の平日予約は順調に推移し、レジデンス業態やワーケーションへのポテンシャルを実感されたそうです。
白良浜前の歴史ある純和風旅館「白浜館」もレジデンスへ業態転換し、今後のワーケーション需要の拡大に向け、更なる強化を図っていかれるとのこと。
*HOTEL SHIRAHAMAKAN(白浜館)

このような観光のみに依存しないリニューアル戦略の成功例は、苦戦を強いられている地方観光の未来において、新たな可能性を示されていると感じました。

後編では、もう一つのWLS会場となっていた「ゲストハウス」での取材を通じて、考察を深堀りします。

後編へつづく

画像提供:(株)白浜館、(株)KabuK Style

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岡崎 広子

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