コロナと子連れおでかけ空間

市川 愛
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市川 愛

長引くコロナ禍、ついに第三波が到来しています。

小さなお子さんがいらっしゃる方は、より一層お出かけ先にも気を遣われることと思います。屋外で楽しめる上野動物園は休日分の整理券予約が瞬く間に埋まり、平日分も午前中の予約は取りにくい状況で、子連れで安心して出かけられる近場スポットのニーズが顕在化しています。区の子育て支援施設は前日までの予約制になり、ふらっと子供と出かけられる場所は公園頼みになっています。2020年4月に開業した『UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店』を平日昼間に訪れると、就学前の子供たちが夢中で遊んでいました。

奇しくも今年開業した商業施設は、屋外空間とのつながりを活かした施設が多くみられます。
東京スカイツリーと浅草駅の間を繋ぐかたちで開業した『東京ミズマチ』は、隅田公園と北十間川の間に位置し、バギーママたちのお散歩のデスティネーションになっています。

コロナ禍、赤ちゃんとお出かけデビュー

私は2012年の入社以来、商業施設や余暇施設の企画開発に携わってきたのち、2019年10月に出産し1年間の産休・育休を取得しました。生後しばらくして、そろそろお出かけでもしたいな、というところにコロナがやってきて、スーパーへの買い出し以外は巣ごもりしていましたが、緊急事態宣言解除後は、家でずっとじっとしていることも辛くなり、お出かけ欲(視察欲?)が沸き上がってきました。

そもそも慣れない子連れ外出、コロナ禍で戸惑う点は多々ありました。
施設によっては感染症予防対策として授乳室で離乳食をあげるのを禁止、車での来館が多い郊外モールではベビーカーの貸出を休止している場面もありました。一方で、貸出ベビーカーに関しては借りるお客様も貸す施設側も安心できるよう、接客面での工夫をしているケースもありました。抱っこ紐で電車に乗って沿線から来館する子連れ客も多い玉川高島屋S・Cでは、インフォメーション横でベビーカーを貸し出す際にお客様の目の前で除菌してから渡してくれました。

安心して遊べる場所を求めて

子供の遊び場という観点では、施設共用部のキッズスペースは閉鎖や遊具の撤去が行われ、密になりがちな乳幼児に関して、受け入れる施設側はかなり神経をとがらせていることが伺えました。特にまだ靴を履いて公園で遊ぶのが難しい月齢の子供の場合、屋内のキッズスペースは貴重な遊び場かつ、親にとっても他の親子とコミュニケーションが取れる場なので、安心して利用できるための空間づくりは急務であると感じました。

閉鎖され閑散とした共用部のキッズペースとはうって変わって、ボーネルンドが運営する『キドキド』のように入場料金を払って遊ぶキッズスペースは賑わいをみせています。
入場時の検温・手指の除菌はもちろんのこと、遊具のこまめな除菌や、場内定員を通常の半数程度に制限し、のびのび遊べる環境を用意することで、営業を継続しています。

今年立川に開業したオープンモールのグリーンスプリングスには家族で楽しめる体験施設『PLAY!』が入居しています。その中の子供向けのプレイグラウンドである『PLAY!PARK』は営業時間中に30分ずつ2回クローズして消毒を行っています。遊んでいる利用者に一時退去をお願いするのは運営側としての負担はありますが、モールの集客核である『PLAY!』から休憩のために飲食店にお客様が流れるという仕組みはモール全体の滞在時間を延ばし、売上を増やす効果もありそうです。

屋外とつながったオープンモールの人気は継続すると予想されますが、寒さが厳しい季節には、屋内で安心して遊べる場所の需要がより一層高まっていくでしょう。利用者としての観点も活かしながら、これからの屋内キッズスペースの空間づくりのポイントを大きく3つ挙げたいと思います。

  • 非接触で楽しめる遊び

これまでキッズスペースには、子供たちの五感を刺激するために触って楽しめる遊具が多く設置されていました。しかしながら、接触することでの感染が懸念される今日では、映像や音を用いて、体をつかったり、集中して考えたりして楽しめる非接触の遊びが求められます。

  • 抗菌コーティング+定期的な除菌

非接触のコンテンツであっても、子供たちはスペース内のあちこちを触ってしまうものです。スタッフによる定期的な除菌を可視化することとあわせて、持続性のある抗菌コーティングも行えると安心です。加えて、消毒液を設置する場合は大人用の高さと、子供が使いやすく目に入らない高さにも設置すると親切でしょう。

  • 換気ができる場所にキッズスペース

これから開発する施設やリニューアルを行う施設では、テラス側など換気ができる場所にキッズスペースを計画できると良いでしょう。テラスや屋外と一体になっていれば、
外で遊びたい幼児と外遊びのできない乳児のきょうだいのいるファミリーが利用しやすくなります。

乃村工藝社は空間プロデュースのプロフェッショナルとして、ソーシャルディスタンスのためのサイン、抗菌・抗ウイルスコーティング、飛沫防止商品はもちろんのこと、非接触で楽しめるソフトコンテンツまで総合的にご提案しています。また、社内には育休明け社員で構成された「TeamM」がおり、ファミリーが安心して過ごせる空間づくりの実績が豊富にあります。しばらくは不安な時期が続きそうですが、施設の運営様が安心してお客様を受け入れるためのお手伝いをすることで、子供からお年寄りまで、すべての人が安心して出かけられる空間を増やしていければと思います。

※「TeamM」
「未来の子どもたちのための“場”と“しくみ”をつくる。」
「空間について考え、対話する」「未来のために、行動する」
この3つをコンセプトに2015年に発足。空間づくりと育児の経験を活かした企画デザインの提案、産学連携の調査研究などさまざまな活動を行っている。
https://www.teamm.jp/jp/

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editor
市川 愛

市川 愛

プランナー
日本文化とプランニング

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