- text and edit by
- 高橋 侑希
アフターコロナの未来を見据え、ワーク&ライフスタイルの変化を止めない
多様性を許容する次世代空間の在り方を探る取材企画
コロナ禍でのテレワーク推進の影響により、会社員でもオフィスを離れ「好きな時に、好きな場所で働く」新しい働き方やライフスタイルを送る人々が増えています。アドレスホッパー、フリーランスに限らず、新たな価値観を持つ人々にフィットする「新しい暮らし」を提案する企業への注目も高まってきています。
緊急事態宣言が長引く中、取材協力を頂いた定額制コリビングプラットホーム「HafH(ハフ)」では、連携する宿泊施設が都市部でも急速に増加しています。ワーケーションin和歌山(地方ワーケーション編)に引き続き、今回は“シティ”でのワーケーションのポテンシャルに着目したいと思います。
「シティワ―ケーション」のポテンシャル
「シティワ―ケーション」とは・・・
“都市部近郊に住む人が、近場の自宅以外の場所で働くこと” と定義
「ワ―ケーション」といえば、ビーチや森林など、自然に囲まれた環境でのんびりリフレッシュしながら仕事をする…という、やや「バケーション」寄りのイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
自宅と異なる環境で気分転換できれば、遠出をしなくても、近場のホテルでのテレワークも「ワーケーション」と考えられます。実際に、都県をまたぐ不要不急の移動自粛が続く昨今、都市部の宿泊施設では様々なコロナ対応プランが人気を集めています。
今回は、コロナ禍で「HafH」と連携された「Global Agents」の代表施設を通じて、東京におけるシティワ―ケーションの“いま”を取材します。
≫「Global Agents」について
NEIGHBORS東十条(ソーシャルアパートメント) 画像提供:Global Agents
代表の山﨑氏が大学時代に手掛けたソーシャルアパートメントから事業がスタートし、現在はホテル、飲食、会員制ワークプレイスなど多岐に渡るライフスタイル事業を展開する企業です。
*ソーシャルアパートメントとは
従来個室のみだったマンションにラウンジやワークプレイス等の交流スペースを導入し、住人同士の自発的な交流を促進する集合住宅です。
創業時の2005年は、facebookなどのSNSが一般に広がり始めた時代でした。SNS的な”交流”というアイデアを実空間にいち早く取込んだ点が当時としては画期的で、その理念は以降展開する施設にも受け継がれています。
「HOTEL GRAPHY 根津」
シェアキッチンがつくり出す”自然な交流”
写真:施設外観 画像提供:Global Agents
東京の中でもローカルを感じる風情ある街、根津。
駅から少し歩いた住宅街の中に突如現れるのが、ホテル事業の1号店、「HOTEL GRAPHY 根津」です。
最初はソーシャルアパートメントとして開業し、2013年にオリンピック・パラリンピック需要を見据えてレジデンシャルホテルに業態を変換。コロナ前までは、宿泊客の7~8割が外国人観光客とインバウンド比率の高い施設でしたが、コロナ禍で外国人観光客が減少。再び客室の一部をソーシャルアパートメント化し、現在はホテルとソーシャルアパートメントの部屋が交ざり合うユニークな施設になっています。
*交流の中心となる 広々としたシェアキッチン
最も特徴的なのが1階のシェアキッチンです。コンロが4か所あり、作業スペースも広々と取られ、あらゆる調理器具が揃います。ディナータイムには宿泊客と入居住民が共に食事をとることも多く、料理を通じて自然と交流が生まれる場所になっています。
写真:1Fシェアキッチン
*宿泊客と入居者が交わる個室エリア
企業の社員寮をリノベーションした施設内は、ドミトリーから2人用の個室まで様々なタイプがあり、シンプルでありながら落ち着く空間です。
写真:サインがかわいい共用空間と2人用個室
*ワークスペースとして使える時間定額制カフェ
エントランスのカフェは、2020年4月の緊急事態宣言で一度閉鎖するも、近隣住民の熱い要望を受け、時間定額制のカフェとして再開。利用料は、なんと1時間300円!
近隣の常連客の仕事やリラックスの場として、サードプレイス化しています。
写真:エントランスすぐのカフェ
*芸大生デザインのオリジナルグッズ
Tシャツやトートバッグなど、お土産に欲しくなるおしゃれなグッズは、近隣の東京芸術大学の学生スタッフがデザイン。
写真:オリジナルグッズ
*谷根千エリアの有名店との連携
フロントでは地元のベーカリーのパンを日替わりで販売。谷根千エリアは下町風情が残る魅力的な場所ですが、コロナ前はインバウンド対応に追われ、その地域資源を充分に活用できていなかったとのこと。今後は原点回帰し、地元との取組みをさらに強化していきたいとのことです。
写真:地元名店のパン
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【施設概要】
HOTEL GRAPHY 根津
所在地:東京都台東区池之端4-5-10
Webサイト:https://www.hotel-graphy.com/
次世代型プラットフォーム「HafH」× 多様性を許容する空間「Global Agents」
「HOTEL GRAPHY 根津」は、「Global Agents」で最初に「HafH」と契約した施設でした。
まだ客足が回復していなかった2020年8月に、稼働を増やすため連携を開始すると、フリーランスやワーカー、アドレスホッパーが次々と訪れるように。「HafH」会員はコミュニケーション能力が高い層が多く、施設が求めるターゲット層と合致しました。彼らが訪れることで交流の輪が広がり、リピーター化にも繋がっているそうです。両社のコンセプトの合致はもちろん、国内での安定的なユーザー確保、平日の稼働率UPへの影響力を踏まえ、すぐに翌月から契約を全施設に拡大することになったとのことです。
「HOTEL GRAPHY 根津」で最も特徴的だと思うのが、ホテルやレジデンスといった機能を時流に合わせ複合/変換していく、運営の柔軟さです。建物が元々企業の社員寮だったということもあり、居室+共用空間という施設構成は保たれているのですが、ハードを必要以上に作り込まず、その分シェアキッチンやカフェなどコミュニティに寄与するエリアを充実させることで、フレキシブルに機能変更できる施設を実現しているように感じました。
これは、宿泊機能単体の従来型ホテルとは対照的です。ハードを必要以上に作りこみすぎる可変性の低い単一機能の空間は、今回のコロナ禍のような事態にスムーズに対応できないことが浮き彫りになったように感じます。
第二の緊急事態宣言下で、ようやく大手ホテルブランドのレジデンス業態参入などがメディアを賑わすようになってきましたが、リノベーション事業から始まる空間づくり、可変性の高い場の提供をそもそも行ってきた同社は、昨年早々に、インバウンドに代わる顧客を取り込み、既にリピーター化へ繋げられています。
ポストコロナの社会を見据えた企業同士のスピーディな連携で、相互のメリットが急速に広がる相乗効果を拝見し、多様性を許容する新たな社会に素早く対応し、変わることができる”フレキシブルな空間”であることが、企業規模に関わらず、ポストコロナの宿泊事業において、参考になるのではと感じました。
後編では、コロナ禍で「宿泊」という概念を変える新施策を打ち出す、同社の都市型ホテル「The Millennials 渋谷」と「THE LIVELY 麻布十番」をご紹介します。
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