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- ノムログ編集部
乃村工藝社グループは、「もっと能動的に社会に貢献する」というビジョンのもと、“ソーシャルグッド”をキーワードに、「環境」「文化」「地域」「人」の4つを重点的なテーマとしてさまざまな取り組みを行っています。そして2021年7月5日から8日の4日間、これまで取り組んできた乃村工藝社グループのソーシャルグッドなプロジェクトを一斉にご紹介する「ソーシャルグッドウィーク 2021」を開催しました。本イベントの全プログラムの様子をノムログ編集部がレポートします。
*「ソーシャルグッドウィーク2021」のレポート記事一覧はこちら
乃村工藝社グループのソーシャルグッド戦略
乃村工藝社グループ初の試みとなる「ソーシャルグッドウィーク2021」、第1日目の初回は社内向けプログラムとして「乃村工藝社グループのソーシャルグッド戦略」と題し、以下の4名が登壇しました。今回のレポートでは、社長の榎本によるソーシャルグッドに込めた熱い想いと、ソーシャルグッド戦略室・菅谷遼によるSDGs活動の世界での動向やSDGsの本質についての講演をご紹介します。(後編はこちら)
<プログラム>
講演1|ソーシャルグッドウィーク開会にあたって(乃村工藝社 代表取締役 社長執行役員 榎本修次)
講演2|世界の動きとSDGs(ソーシャルグッド戦略室 菅谷 遼)
講演3| 乃村工藝社グループのソーシャルグッド戦略(ソーシャルグッド戦略室 室長 斎藤雄一)
講演4|ソーシャルグッド起点のビジネスプロデュース(ビジネスプロデュース本部 執行役員本部長 原山麻子)
講演1|ソーシャルグッドウィーク開会にあたって
代表取締役 社長執行役員 榎本修次
乃村工藝社グループと社会と地球の未来を考える
いま、SDGsへの取り組みが多くの企業で広がっています。3月にはApple社が2030年までにカーボンニュートラル、つまり脱炭素社会を達成すると宣言しました。しかも、自社だけでこれを目指すのではなく、全てのサプライヤーと一緒に実現していくという画期的なプランです。これからの時代、企業が社会的な責任を果たしていくには、自社だけではなく他の企業と連携をしながら持続可能な社会をつくっていくことが求められています。
こうした社会全体の動きの中で、このソーシャルグッドへの全社を挙げた取り組みは、とても大切なことです。しかし社会やお客様からのご要望があるということだけではなく、私たちが「自らの手でつくり上げていくんだ」という意志を持つことが重要になります。これから、そのことについてお話しします。
この取り組みは、乃村工藝社という企業の変わらないDNAの中から湧き出てくるものだと私は信じています。ソーシャルグッドを進めていくことは、社会の変化の中で、これからの乃村工藝社グループの成長の基盤をしっかりとつくり出すだけではなく、乃村工藝社グループの企業文化を未来に向けて磨き上げ、皆さん一人ひとりの仕事を通した成長にも繋がっていくものだと考えています。
ソーシャルグッドの思想は経営理念の中にある
皆さんは1980年につくられた乃村工藝社の経営理念を覚えていますよね。「人間尊重」、「新しい価値の創造」、そして「豊かな人間環境づくり」、言い回しは硬いですが、この三つの言葉を通して語られる経営理念は、まさにソーシャルグッドの考え方に繋がるものだと思います。先輩たちの時代から変わることなく目指してきたもの、それは常に人々の多様な価値観と、社員の人間性を何よりも大切にして、クリエイティブとエンジニアリングの力で空間の可能性をとことん追求し、人々を豊かにする人間環境をお届けすることです。
私たちは単に、空間の設計・施工をする企業ではなく、社会に豊かな人間環境を届けていく企業でありたいと考えています。ソーシャルグッドは、空間という場を通して人々の日常に新しい体験と繋がりをつくり出し、心にプラスの価値を届ける力を持っています。社会や未来を楽しくする幸せなインパクトを与える、それこそが乃村工藝社グループらしいソーシャルグッドではないでしょうか?
新たなフェーズに入る乃村工藝社のソーシャルグッド
ソーシャルグッドの先には、事業の可能性が無限にあります。乃村工藝社グループのソーシャルグッドは、単なる社会貢献的な取り組みではありません。空間がつくる豊かな人間環境で、お客様企業と生活者を繋ぎ、持続可能な社会を実現する幸せなインパクトを起こす取り組みです。
コロナの時代だからこそ、ソーシャルグッドをテーマにしたこれからの人々と社会のあり方を見据えた提案が求められています。
今回のソーシャルグッドウィークでの気づきを生かし、今取り組んでいる一人ひとりの仕事の中で、ソーシャルグッドに繋がる提案をできないかもう一度考え、ソーシャルグッドチャレンジに取り組んで行きましょう。今日から乃村工藝社グループのソーシャルグッドは、新しいフェーズに入ります。今日からの4日間で、きっと新たな気づきが生まれるはずです。
講演2|世界の動きとSDGs
ソーシャルグッド戦略室 菅谷遼
2008年入社。営業職として、大手民間企業を中心としたブランディングを軸とする、コミュニケーション空間づくりに取り組む。2019年、労働組合組合長就任。2020年、事業構想大学院大学 SDGs新規事業プロジェクト研究(東京・第4期)修了。2021年、現職(営業職 兼 ソーシャルグッド戦略室)
SDGsとは、地球との共生をめざす取り組み
2019年、国際平和デーの基調講演で元国連事務総長のパン・ギムン氏が「We don’t have Planet B. We must act now.」と発言しました。私たちが住む地球という惑星には、プランBは存在せず今行動を起こさなければならないという強いメッセージです。
そして、スウェーデンの環境学者が提唱しているプラネタリーバウンダリー(地球限界)という考え方があります。これは、地球の健康状態を図示したもので、すでに生物圏の一体性における絶滅の速度、生物地球科学的循環における窒素、リンの生物圏への流入が高リスクのレッドゾーンに入っています。人間でいえば即入院レベルの状態です。
(環境省HPより)
次に約46億年という地球の年齢を一年のカレンダーに落とし込んでみると、人類が誕生したのは約600万年前なので、カレンダーの上では大晦日の最後の5分にしかなりません。人類はたった5分で大きな環境破壊を起こしているというのが現実です。このような、まさに待ったなしの状況で生まれてきたのがSDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)です。
国連加盟国が全会一致で採択した持続可能な開発目標(SDGs)
ここからはSDGsの本質についてお話します。SDGsは、2015年9月の国連サミットで、加盟国193ヶ国の全会一致で採択された目標です。大きな特徴は「誰一人取り残さない」ことを誓っていることです。SDGsには17の目標が掲げられ、社会、経済、環境の3分野にまたがっています。さらにその目標の下に169のターゲットとそれを評価する232の指標が定められています。
SDGsが成り立つ前に、2001年から2015年までMDGs(Millennium Development Goals ミレニアム開発目標)という貧困・社会的排除の問題解決のための目標が定められていました。しかし、この目標は先進国が途上国に対して設定したものでした。そこでSDGsでは深刻になる地球問題の解決に向けて、先進国も途上国も、全ての国を対象に、誰一人取り残さないことを大きく掲げているのです。
何故、企業がSDGsに取り組むのか
皆さんの中には「なぜやらなければいけないのか」というご意見がある人もいるかもしれません。しかし、企業がSDGsに取り組む理由は、地球の未来に貢献するということだけではなく、優秀な人材を確保するという一面もあります。
いま、Z世代※1、ミレニアル世代※2など、新しく会社に入ってくる若者の価値基準が大きく変わっています。企業選択の理由が、企業規模、給与、福利厚生などではなく、社会課題の解決にどう貢献しているかというところで判断しています。SDGsは2020年からは小学校、2021年からは中学校、そして2022年からは高校でも教えられます。若い世代にとって企業の社会貢献は、とても重要になっているのです。
また、今までの社会貢献は、利益の一部から費用を捻出して社会貢献に充てていました。しかし、現在では、原価の一部を使いながら改善をしていくことが大きな目標になっています。世界の投資家たちもEnvironment(環境)とSocial(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の三つの観点から、企業の将来性や持続性などを分析、評価した上で、投資先を選別するESG投資を実践するのが当たり前の流れになっています。企業がSDGsに取り組まなければならない大きな理由がここにあります。
※1:Z世代:1990年代中盤以降に生まれ、生まれたときからインターネットが普及しているデジタルネイティブ世代のこと。
※2:ミレニアル世代:1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代のこと。情報リテラシーが高く、物質的な豊かさよりも精神的な豊かさを求める、仲間とのつながりを大事にし、より社会貢献性の高い仕事に興味がある。
人をつくり、新しい事業を創る
SDGsの本質は、人が変わらなければ何も変わらないということです。どんなにいい目標でも、いい制度でも、人が変わらなければ何も動きません。では、なぜ私たちは変わることができないのでしょう。それはSDGsの目標が大きすぎて、イメージしづらく、自分ごと化するに至らないからではないでしょうか。
また、これまでの企業は、統率によるつながりのためトップダウンで動いていました。しかし、これからは、思想によるつながりで、社員の一人ひとりが自ら考え行動することが求められています。
乃村工藝社のやってきたことは「エモーショナルデザイン」だと私は考えています。社内・社外の全ての方々の心のSwitchを入れて、人をつくり、事業を創ることをやっていきたいと思っています。
今、SDGsの目標は17ありますが、私はさらに18番目の目標「クリエイティブで人の心にSwitchを」を付け足しました。先ほど社長のお話にもあった、クリエイティブの力とエンジニアリングの力で心にSwitchを入れることができれば、人はもっと変わることができると私は考えています。
「持続可能な社会を実現し、幸せなインパクトを起こす」という榎本社長の力強い言葉でスタートした本イベント。世界的なSDGsの動向に対し、クリエイティブ&エンジニアリングの力が人の心に働きかけること、そのような人同士のつながりこそがSDGsの本質につながることをお話しました。後編では、空間創造を起点とする乃村工藝社グループが取り組む「ソーシャルグッド」の具体的なイメージを戦略的な視点からお届けしていきます。
後編につづく(ノムログ編集部)
文:岩崎唱/写真:安田佑衣
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