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- ノムログ編集部
2021年9月30日。テレビ朝日系列の宮城県のテレビ局、khb東日本放送様が新社屋に移転、それに伴い新しいCI(コーポレート・アイデンティティ)が策定されました。
この新たなCIの策定とブランディング、新社屋1階エントランスの空間デザインを乃村工藝社のビジュアル・グラフィックデザインのプロフェッショナルチームであるIVD(アイブイディー,Integrated Visual Design)アートディレクターの鈴木不二絵が担当。(IVDの紹介はこちらから)
新社屋に移転してから約2ヵ月半が経った2021年12月某日。鈴木が仙台の地を訪れ、新社屋の移転と新CIの策定を担当されたkhb東日本放送様のプロジェクトチームの皆様と当時を振り返りながら対談、思い出話に花を咲かせました。
新CIの策定は、なぜ乃村工藝社IVDに依頼されたのか
左から、乃村工藝社IVD 鈴木不二絵、khb取締役新社屋プロジェクト室長 加藤東興さん、新社屋プロジェクト室・室次長 清水紀夫さん、新社屋プロジェクト室 志賀英仁さん
※所属・肩書は取材当時のものです。
――まずは自己紹介をお願いします
加藤
「取締役新社屋プロジェクト室長の加藤東興です。」
清水
「新社屋プロジェクト室・室次長の清水紀夫です。現場を取りまとめながら、経営・意思決定層と現場とをコーディネートする立場でした」
志賀
「新社屋プロジェクト室の志賀英仁です。khbには各部署の若手社員で構成された未来プロジェクトという組織がありまして、そのリーダーも務めています。新CIの策定では未来プロジェクトメンバーの意見を重視して動きましたので、不二絵さんとは私が一番やりとりをすることが多かったかと思います」
――新CIは未来プロジェクトを中心にして決めていかれたそうですが、その経緯を教えていただけますか
加藤
「それはもう、これから会社を背負って立つ若い人たちに決めてもらわないと、おじさんたちが決めちゃうと地味になりがちというか(笑)。いや、真面目な話をすると、経営層が決めてしまうと現状維持に近いことになってしまう可能性が大きい。そうなると、会社全体で盛り上がりも起きないだろうし……。我々の中で『みんな(社員)の意見が反映される形式がいいよね』という話になりまして。それなら、未来プロジェクトでやってもらうべきだと考えました」
清水
「大きな何かを変更するときは“決め方を決める”というのが一番難しい。それに尽きる気がするんですよね。大人数で話し合いをすると、どんどん無難な方向にいってしまう。でもCIを変えるチャンスは1度きり。それなら、これから長く会社にいる若手のフレッシュで柔軟な発想を取り入れるべきだろうと。今の枠で収まらずに殼を破りたい――その想いが我々も根底にあったので、若手の意見を大事にしたかったし、若手からどんどんいろいろな提案やアイディアが出てくる社風でありたい、とも考えていました」
――新社屋移転のタイミングで、1974年の開局以来からのCIも変える。最初からその予定だったのでしょうか
志賀
「新社屋移転が決まったときに、意見ボックスという目安箱みたいなものを作ったんですね。そこで随時社員やスタッフから意見を募集していたんですが、その中にロゴも変えた方がいい、という意見が多くありました。それで、CIを変えるという方向に意見が固まっていきました」
清水
「コーポレートカラーがバラバラだとか、そういう意見があって思いの外いろいろな世代の社員が課題として認識していることがわかりました。先にエントランス空間のプロポーザルを実施していたのですが、当時から不二絵さんのお名前も入っていました。そのときから私が感じていたのは『ノムラさんはビジュアル的な提案だけをするのではなく、必ずそれに伴ったストーリーを掘り起こしてくれるんだな』ということ。そこが凄いところだと感じており、私としてはぜひ新CIも一緒に考えたいと思っていました」
加藤
「そう、はじめは『CIデザインやブランディングもノムラさんにお願いできるものなんでしょうか』、みたいな話になったような気がするなぁ。御社とだったら新CI策定を上手くやっていけるんじゃないか、という気持ちがきっとあったんでしょうね」
鈴木不二絵
「ありがとうございます。よくぞ私どもに決めてくださったと、とても嬉しかったことを覚えています」
志賀
「正式に依頼をして、最初のプレゼンテーションで確か15種類以上もデザイン案を提出してくださったんですよね」
鈴木不二絵
「はい、その時提案したものがこちらになります」
加藤
「そうです、これ、これ。すでに懐かしいなぁ」
最初のプレゼンテーションで鈴木不二絵が提案したデザイン案の数々
大切にしたのは「ことばの共有」
――最初に提案をご覧になったときはどう感じられましたか
志賀
「最初は何案提案してもらえるのかも教えてくれなくって(笑)。どんな感じになるのかなぁと思っていたら、どんどんいろんなパターンをご提案いただいたので『こんなに⁉』と驚きました。さらに、我々が移転や新CIについて事前に共有していた『新しく生まれ変わる』『地域との一体感』『愛着』『挑戦の心』などの言葉を基にそれぞれのロゴにストーリーがあり、不二絵さんが一つひとつ丁寧に説明してくださったんですよね。あのときは、ノムラさんに頼んでよかったな、と心から思いました」
鈴木不二絵
「ありがとうございます。私はどのお仕事でも“ことばの共有”というものをとても大切にしています。khbさんから意見箱の内容を共有していただきましたし、皆さんと打ち合わせしている際に新しいCIに対する想いや、将来こうなっていきたいという熱い気持ちもたくさん聞かせていただきました。初回のロゴプレゼンテーションの時には、それらの“ことば”をまとめた資料もお持ちしましたよね」
志賀
「そうでしたね。あの資料もとてもわかりやすく、提案に紐づくストーリーも全て納得いくものだったので、15種類以上ある案の中からどれを選べばいいかすごく迷ったんですが、まず未来プロジェクトでこれまで積み上げてきたことを基準として、6案に絞りました」
加藤
「6案を経営層に見せたんですが、そのときも不二絵さんに一つひとつデザインについて説明してもらったんです」
志賀
「最後は2案に絞り、そしていまの新しいロゴを選んだという流れです」
加藤
「もう1つの案も、良いんだよね、やっぱり良いのが残るんだ(笑)」
鈴木不二絵
「CIのお話を伺ったときに、自分の中で最初にポンと出てきたのが、数字の5の中にぐりり(khbイメージキャラクター)がいる、というイメージだったんです。『なんチャンネルですか、と聞かれることが多い。だから、新しくなるなら5をアピールしたい』というお話が社員の方から出ていたのが印象的だったので」
志賀
「最終的には不二絵さんのそのファーストイメージとは違うデザインが選ばれたわけですが、決定したロゴに、数字の5の中にぐりりを入れたデザインをつくってもらったんですよね」
加藤
「khbは5チャンネルなんだということをアピールしたい。そういう気持ちが、社員に強くあった。広報部からの意見もあったり。いまはロゴと5をセットにすることを基本としています」
khb東日本放送様が共に時間を過ごす中で感じた、鈴木不二絵の仕事ぶりとは
――ぐりりをリファインする計画は最初からあったのでしょうか
清水
「いえ、実はそれは不二絵さん自ら提案いただいたんですよ」
加藤
「こちらからお願いする前の段階で提案してくださった。リファインされたぐりりを見たら、やっぱり新しいロゴと合ってるんですよね。セットで見たときに、リファインしたものの方が馴染むというか、親和性があるというか。これは『もうやるしかないな』と改めて感じたので、それですぐに社長に相談したら『いいんじゃないか』という話になった。若手もみんなやりたいと言っていたよね」
志賀
「未来プロジェクトのメンバーからも、やはりリファインしたぐりりは可愛いと評判がよくって。リファインも弊社のチャンネルである“5”にこだわっていて。尻尾の形状や、首が“5”度傾いているとかですね。新社屋見学に来てくださった方に、そのストーリーを紹介すると『へえ、そうなんだ』と興味を持って聞いてくださるんですよ。それは良かったなと」
――今回、色にもかなりこだわったと伺いました
鈴木不二絵
「そうですね。今回のCI策定では、色はポイントであると思いました」
志賀
「これまでkhbのロゴは赤や緑、濃紺を使うなど、あまり定まっておらずバラバラでした。だから印象が薄いというのもあったのかと思います」
鈴木不二絵
「事前に話をお伺いした際、“khbといえば、これ”というイメージを出したい、というご意見が多くありました。そこで、視聴者や地域の方々にkhbさんをしっかりと印象づけるものを創りたいなと考えました。将来的に例えばそこにkhbという表記やロゴが無かったとしても色を見ただけでkhbを感じるような、そこまで発展するような個性と特徴を出せないかなと考え、思い切ってコーポレートカラーにピンク・ブルー・パープルの3色を取り入れた提案をさせていただきました。それぞれの色に想いも込めています。
また、テレビ局という特性も生かし、色はRGBで挑戦できるかなと思いまして最初のプレゼンテーションの際にあわせて説明をさせていただきました。モニターや画面で見る場合には、色域の広いRGBならではの色を設定することで、より個性を出せると考えていたので」
加藤
「正直、色に対しては経営層には抵抗まではいかないまでも『本当に大丈夫なのか?』という意識があったのですが、やはり若い層や女性からは、これから変わっていく、進んでいくんだということを示すならありではないかという意見が多かった」
鈴木不二絵によりデザインされた、新ロゴ(上)と、リファインされた、ぐりり(下)
清水
「これまでとは打って変わって非常にカラフルになりましたから。我々も進行していく最中には、結局無難なものが選ばれるんじゃないかという危惧がありました。でも最終決定の場でこれが選ばれた瞬間、会社の方向性というか、いままでにないところを目指すんだという強い意思を感じることができて非常に嬉しかったですね。もちろんこれまでのものと大きく変えていくわけですから、賛否はある。それでも会社として振り切って、この新しいデザインを選んだ。そこに会社の決意や想いみたいなものが感じられますし、それは言葉にしなくてもきっと社員にも伝わっていると思うんです。そういう効果はあったのではないかと思いますね」
志賀
「単なるロゴのデザインではなくて、CIとして考えたときに企業のアイデンティティを表現する上で、ロゴを見ただけでポジティブさや、我々は変わるんだという姿勢が表れている。とてもいいロゴ、コーポレートカラーになったのではないかと思っています」
加藤
「それからね、不二絵さんがつくってくださったあのテレビ朝日系列各局のロゴと比較した資料。あれがとてもわかりやすかった!すでにある各局のロゴと、khbの新しいロゴを並べた場合はこうなる、というのが一目瞭然で。並べてもらうと、新しいロゴは各局の中でも圧倒的に目立つなと感じました。判断もし易かったですね」
清水
「我々からお願いしなくても、ご自分で全国の局のロゴを調べてあって。仙台にあるテレビ局に関しては全て足を運び、写真まで撮るなどしてわかりやすい資料を作成してきてくださる。そういう不二絵さんの熱心さにも共感して。この仕事に対するマインドの一つひとつが、私たちはとっても嬉しかったですね」
鈴木不二絵
「ありがとうございます。日頃からとにかくあらゆる視点からリサーチをすることを大切にしています」
加藤
「世の中にはいわゆる“やらされ仕事”っていうものもあるじゃないですか。仕事だからやってますみたいな雰囲気が出ている仕事ぶり。でも不二絵さんの仕事ぶりは、そういうのとはまるで次元が違うんですよ。お願いしていないことでも『khbのためになること』、『やったほうが良いだろうなということ』などを積極的に考えてくれていて、提案してくださる。不二絵さんの仕事は、そういった提案の連続でしたね」
鈴木不二絵
「そのなかでご理解いただいて進めたことの一つがこのぐりりのマケット※でしたね。今後の広報戦略やグッズ制作において2次元だけではなく立体のモノも展開するだろうと考えたときに、指針となるものがあったほうが良いと思い提案しました。実際、新社屋移転記念特番でのモニュメント制作にて活用されたときは嬉しかったですね」
※マケットとは本来「模型」を意味します。立体物(モニュメント、フィギュア、ぬいぐるみなど)を制作する際、マケットを立体指標とすることで、制作物ごとのフォルムに一貫性・統一感をもたらすことが可能になります。
志賀
「グッズの提案も凄かったですね。提案していただいたグッズはどれもビジュアル化されていたのでイメージがつきやすかったです。そのおかげで3次元でできることの可能性がいろいろあるんだと気づいて、マケットをつくったほうが良いと思いましたね。そういえば、ぬいぐるみの制作段階のとき、データ上でのチェックバックがなかなか難しく、制作会社からサンプルに目や口の位置などを『マジックで描いてください』と言われたのですが、不二絵さんはフェルトで各部位をつくって位置出してくれて、とても丁寧な仕事ぶりでしたね」
鈴木不二絵
「愛情が湧いたぐりりの顔にどうしてもペンを入れることができなくて(笑)」
マケット(右)をもとに、ぐりりの3次元の完成度を高めるためにきめ細かなチェックが重ねられた。
新社屋移転と新CIの策定を終えて、いまの想いとこれから
――新社屋プロジェクトと新CIの策定をやり遂げられたいま、気づいたことなどがあれば教えていただけますか
志賀
「勉強になりました、この一言に尽きます。先ほど加藤が話しましたが、仕事とは、求められたことだけをやって終わりの“やらされ仕事”ではダメなんだと。それ以上のものを自発的に行い、その積み重ねで信頼を勝ち取ることが大事なんですよね。もちろん、その姿勢は今回の仕事だけではなく、すべての仕事に共通する。若手のリーダーとして動いている以上、これからは自分がそういった面を積極的に見せていかなければならないなと強く意識するようになりました」
清水
「プロのクリエーターの方と私たち発注者側の間にはギャップがあって、先ほど話に出たストーリーやコンセプトが大切ということは十分に理解しつつも、一方でそれを伝えきれない方々もたくさんいるし、正直知らない人がほとんどだと思うんです。結果的に目に触れるのはロゴなどであって、重要なのは最終のアウトプットであるカタチや色、インパクトが全てという考え方もある。初めてデザインを依頼する人にとっては、このようなところにも難しさや、わかりにくさがある気がします。
今回不二絵さんには初めにこのことをはっきりと伝えていたんです。それに対して不二絵さんはバランスよく汲み取っていただいて、これまでの未来プロジェクトや意見ボックス、私たちとの会話から出てきた潜在的なニーズや、根底にある未来への想いからストーリーをつくり、周囲に浸透させながらカタチにしてくださった。CI策定、デザインプロセスを通じてこのギャップを埋めていただいたといいますか。
ですのでCIをつくるだけのためにワークショップをしなくても、今まで社内で自然体でやってきたことを上手くカタチしてくださったなというのが良かったなと感じています」
――いまの清水さんのお話は、他の企業さんの参考にもなるかもしれないですね。潜在的な意見も含め、様々な声を集約できる仕組みがあれば、CIの策定も、その後の展開もうまくいくんだという。ワークショップ開催自体が目的となってしまっている企業もあると聞きます
清水
「そうなんです。今回、新社屋移転のプロセスにてこれまでやってきたことと上手くリンクさせながらCI策定やいろいろなデザインを展開してきたので、プロジェクト全体を通して軸がブレなかった。だからこそCIの世界観がメインエントランスやピクトサインでも表現できたのではないかと思っています」
鈴木不二絵
「私もブランディングの観点から新社屋ではCIと空間、各種ツールやアプリケーションなど、いわゆるVI(ビジュアル・アイデンティティ)にて統一感をもってなくてはいけないと思っているので、そう言ってくださって嬉しいです。
それと私はクライアントの想いや要求をカタチにすることはもちろん、その上でクライアントのお客様、私の立場からすると<その先にいるお客様>をクライアントと同じように大切にすることをいつも意識しています。クライアントと気持ちを共にしながらも私らしいアプローチで。
クリエイティブな仕事をする人は、それぞれに “成し遂げたい想い” のようなものがあるのではと日頃から思っているのですが、私の場合、<その先にいるお客様>の記憶に残るエッセンスをデザインにとり入れ、記憶から思い出になっていくものを創りたいと常に考えています。
今回、新しいぐりりや見ると微笑ましい気持ちになるピクトグラム、エントランスを印象づけるカラーバー、そのバーの中の隠れぐりりや光るぐりり、カフェのバリスタぐりり、そしてグッズなど、一つひとつをその想いからご提案しました。khbの社屋を訪れてくださった方たちの記憶に残り、khbを好きになってもらいたい。訪れた子どもたちが、その記憶をもって成長し大人になる……。そんな温かく、楽しい思い出づくりのきっかけになれたらいいなと。そんなことを想像しながらデザインしていきました」
加藤
「この仕事を一緒にやって感じたのは、不二絵さんはクリエーターとして優秀なのはもちろん、とにかく仕事がやりやすい人なんですよ。簡単な言葉のように聞こえるかもしれませんが、これは重要なことです。こちら側からのオーダーのままカタチにして提案されても『ちょっとそのまんま過ぎるよね』となる。一方で、クリエイティブ面ばかり強く主張されても引いてしまうんですよ。その辺りの塩梅が不二絵さんは非常に適切なんです」
鈴木不二絵
「嬉しいです。ありがとうございます」
加藤
「いろんな意見交換をしていく中で出てくるキーワードだったりヒントだったりを敏感に察知してくれていて、それをデザインに落とし込んでいくのがもの凄くうまい。そんな風に感じながら一緒に仕事をしていましたね。実は私が言った記憶がないくらいのことも『加藤さんがおっしゃられました』といってデザインしてくれることがあったり。ちょっとした会話の中でも不二絵さんの感性で大切と感じたことをインプットしていてくださるので凄いなと思いましたね」
鈴木不二絵
「初めに皆さんのお話を伺った時に、少し控えめで、誠実な会社なんだと感じました。だけど先ほど潜在的にあった想いとの話もでましたが、変わりたいという強い気持ちも伝わってきて、『その想いを後押ししたい!』それが使命だと考えていました。だから皆さんから発せられる“ことば”や雰囲気に敏感になっていたのだと思います」
――そうして策定されたCIによって社員や視聴者、地域の皆様をはじめ、周囲になにか変化はございましたか
志賀
「私は若手社員と話す機会が多いのですが、ぐりりのリファインも含め好意的でした。これまで社内的に閉塞感があるといった話が出ていたのが、これを機にポジティブな雰囲気になりつつあるのは感じています。そういうこともあって私はデザインの力って凄いなと思っていて。だからこそこのコーポレートカラーに対しては誰よりも愛着があるし、会社の資料をつくるときもこのカラー以外は使わないくらいに思っています(笑)」
加藤
「そうそう、私個人としては今まで社章を付けるのが好きじゃなかったんですが、いま新しくなったものは喜んで付けてますよ。多くの人に見てほしいなっていう気持ちがとっても強いです。移転してきてから社章や社員証を付けていると、地域の皆様に『khbの方ですか』とか『宜しくお願いします』などと声を掛けていただける。本当に嬉しいですし、誇らしい気持ちになりますね。
それといま、テレビが厳しいといわれるなか、新CIのおかげなのかはわからないのですが、khbは比較的視聴率が良いんです。『khbは変わってきているな』ということが伝わっている結果ではないかと感じています。また全体的に注目度も上がっています。YouTubeのチャンネル登録数などもコンテンツの充実もありながら、これまでの断トツの最下位から民放で一番になっています」
清水
「移転してから、視聴者を対象に新社屋見学会をやったんです。1,300人くらいの方にロゴやエントランスを見てもらったんですが、印象はすごく良くて柔らかい、親しみやすいといった反応がとても多いですね。柔らかい色って、『地域の方々を大切にしますよ』ということが伝わるのではないかという気がしてます。そういった意味ではやはりロゴであるとかカラーは大事だと感じています。特にロゴは女性的な部分があったり。私たちは女性や若いファミリー層に対してもっとターゲットとして強化したいとの狙いもあって。このことは不二絵さんにきちんとお伝えしなかったのですが、自然とマッチしましたね」
鈴木不二絵
「ありがとうございます。大切にしたのは、視聴者や移転先の街の方々に親しみを持ってもらいたい、ぐっと近づきたいという想いを込めることでした。ですのでロゴのデザインのディテールでは、先端の鋭角エッジでは未来に向かって挑戦し続ける姿勢を表現しながらも、全体的に丸みを帯びたフォルムにすることで「安心」や「親しみ」を表現することを心掛けました。それとこれまでは大文字のKHBでしたが、柔らかい印象を与えるように小文字のkhbでデザインをしたんですよ」
――Twitterでも盛り上がってましたね。ロゴ発表前はいろいろと予想されていたり、発表直後からロゴがアップされていたり。また地元商店街がぐりりを使ったフラッグを付けてくれていたりしていました。地域の方々に心待ちされていた様子がうかがえます
新ロゴとぐりりを使ったフラッグで地域とのつながりを深める
加藤
「本当にウエルカムな雰囲気でしたね。楽しみにしてくださった方がいっぱいいて。先ほど清水より新社屋見学会の話がでましたが、想定していた定員の3倍を超える応募がありました。注目度があると感じましたね」
――街や地域の皆様とのつながりを大切にしていきたいという話も伺いました
清水
「私たちもここに社屋をつくったから終わりではなく、khbがエンジンとなって昔からある商店街や新しい開発エリアを上手く融合して、『この辺りってなんかいいよね』って言って貰えるような街づくりを地域の皆様と一緒になって取り組んできたいです。CIを起点とした私たちkhbのブランディングからこのエリアのブランディングまでしていきたいですね」
加藤
「街づくりの視点については建築計画の段階から意識をしていました。目の前にイベントなどもできる杜の広場があるので、連動することも考慮し1階エントランスも大きくして建物の中でもイベントが出来るようにしました。そこに地域の皆様に集まっていただき、khbと触れ合い繋がれるような、かっちりとしたビジネススペースとは違うCIの世界観のあるエントランス空間のデザインをしていただいたんですよ」
清水
「当初は、カフェもいまのような形態ではなかったんですけど、提案いただいたぐりりがすごく良くてコラボレーションさせようという話になりました。いまは想像以上にお客様がたくさん来てくださっていますね」
加藤
「そうそう。ぐりりカフェも不二絵さんが積極的にやりたがっていて、それでお願いすることになりました。常に『やらせて欲しい』って雰囲気を出してアピールしてましたね(笑)」
ぐりりカフェが地域とのつながりを深めるきっかけに
――最後になりますが、未来に向かってkhbは新しいCIやロゴと共にどのように成長していきたいですか
加藤
「社員のみんなが気に入った素敵なCIとなったので、社章なども誇りに思って付けてくれています。khbが変わったという象徴にもなっているので、その気持ちを大切にしながら足を止めないで色々なことに挑戦をしていき、県民から親しまれる局になりたいと思います。仙台といえばkhbのロゴが思い浮かぶくらいになるのが理想ですね。それと新幹線や在来線からも新社屋のロゴやぐりりスポーツ広場のロゴとぐりりが非常に目立つようになったので、これから益々認知が進むのではないかと期待しています」
志賀
「ブルー、パープル、ピンクといったカラーが特徴的だと思うので、この3色をみるとkhbと思い浮かべてくれるようになるといいなと思います。先日買い物に行ってストラップを見ていたときに、ちょうどこの3色があり、『あっ、khbだ』と思ったことがあって、そんな風にテレビを観ていない時でも、ひょんなことからkhbを思い出していただけるようになれば嬉しいなと。あとこの3本のラインも気に入っていて、社名やロゴが無くてラインだけ見た時でもkhbをイメージしてもらえればと思っています」
鈴木不二絵
「ありがとうございます。社員の方々はもちろん、視聴者や地域の皆様がどこへいてもこのカラーやライン、そしてぐりりを見つけただけで、『khbだ!』って感じたり、宮城県や仙台のことを思い出してもらいたいなと考えデザインしていたので、そうおっしゃっていただいて嬉しいです。
あの、実は今日お見せしたいなと思っていたものがありまして。御社のブランドムービー(冒頭動画)をつくらさせていただいたんです。良かったらいまから一緒に見ていただけませんか」
この後、鈴木がつくったブランドムービーを全員で鑑賞し、今後のkhbブランド戦略やぐりりの新たな展開計画などで盛り上がる中で対談は終了。khb東日本放送様と鈴木の仕事はどうやらこれで終わりではなく、この先も何かの形で続いていくようだ。そんな余韻を感じたノムログ編集部の面々は、新たな展開があることを祈りつつ仙台の街を後にしました。
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