- text and edit by
- 横田 智子
在宅育児の日々を振り返って
新型コロナウィルスの影響により、感染予防・外出自粛に伴う新しい生活に慣れるため、多くの方々が多大なご苦労をなさったこととお察しします。私は3歳児の子をもつ母として、約2ヶ月間の在宅育児&在宅勤務生活を経験しました。
この生活が始まった当初は、ウィルス感染から家族を守ること、まだ一人遊びが上手にできない3歳児の育児と在宅勤務の両立、そして外出を控えた環境下でメンタルを維持するために、試行錯誤を繰り返す毎日でした。
そして緊急事態宣言が解除された今、この新たな生活を乗り切るためにいろいろと試した中で、最も救われた点について振り返ってみると、「マネジメント」の視点に集約されるのではないかと感じています。大きく分類すると、以下の3つに整理されます。
時間のマネジメント/遊びのマネジメント/心のマネジメント
これからNew Normal=新しい生活様式に移行していくことになりますが、しばらくは第2波の発生や継続的な感染予防を念頭に、家族で過ごす時間が多くなると思われます。今になってまとめられる「コロナ禍における在宅育児マネジメント」の視点が、これからの新しいライフスタイルにおいて活用できる点があればと思い、その内容をご紹介させていただきます。
*あくまでも一個人の経験をもとにした考察です。子どもの年齢・性別・嗜好や家庭環境によって参考にならない点がある可能性についてご了承ください。
1|時間のマネジメント
育児シフトと仕事部屋をつくる
まず、私たち夫婦は幸運にもそれぞれ100%在宅勤務、自宅育児を認めていただける環境にありました。子どもが生活の大きな変化にストレスを感じないよう、「親のどちらかが必ず向かい合って相手をすること」を約束事とし、毎週、育児担当のシフト表をつくりました。
また個室を仕事部屋としたので、子どもに「仕事に行ってくるね」と挨拶するようにしました。慣れてきたころには「今日はどっちがお仕事?」と子どもが聞くようになり、前日には「明日はこんな予定だよ」と話すように心がけました。
子どものデイリースケジュールをつくる
これまでの生活リズムを崩さないよう、保育園での過ごし方を参考に、子どものデイリースケジュールを書き出しました。
[午前]
1. 創作のじかん:工作やお絵描き・ドリルなどの手と頭を動かす活動
2. 運動のじかん:ヨガ・体操・体あそびなどの主に身体を動かす活動
[午後]
3. 遊びのじかん:ごっこ遊びやパズルなどの自由な活動
ただし、相手は気まぐれな3歳児なので、仕事のようにスケジュール通りにはいきません。大切なことは大まかな時間の流れを頭に入れておき、遊び以外の食事や昼寝などを毎日決まった時間に行うこと。どちらかと言うと、大人が主体的に動くためのスケジュールです。
遊びの内容も少しくらい偏ってしまってもOK。遊びの時間も30分~1時間ごとに遊びの内容を変えると、「次は何しよう?」と楽しい気持ちを継続させることができました。
2|遊びのマネジメント
前述の3つの活動のタイプ(創作・運動・遊び)のバランスを意識しながら、できるだけ自宅にあるものを繰り返し使って、遊びのバリエーションを広げることがポイントになりました。
例えば…
創作:スタンプやシールを自由に貼った上に、シーンを想像してさまざまな絵を書き足してみる
運動:動画コンテンツに頼るだけなく、絵本に出てくる人の表情やポーズをマネしてみる
遊び:テーマを設定した「ごっこ遊び」をしてみる
特に「ごっこ遊び」は子どもからも次々に提案があり、楽しく展開していった事例をいくつかのパターンに分類してみました。
CASE 1|小さなモノをテーマ遊びに展開する [アイスクリーム屋さん]
折り紙でカラフルな”アイスクリーム”をたくさん折り、それぞれの味を表現するイラストを描いたり、看板をつくったりして、空間として設えました。すると、その後につくった粘土の型抜き“クッキー”やビー玉の“ジュース”もサイドメニューとして自分から販売。自分でつくったものでお店が彩られていく様子を喜んでいました。
CASE 2|用途の違うモノを組み合わせて空間化する [電車ごっこ]
一緒に積み木を長く並べて、動物のフィギュアを乗客に見立て、先頭に運転手役の椅子を置きました。すると自分からマイクを使って乗客に挨拶をしたり、ひとりひとりと会話したり、おやつをプレゼントして回り、自分なりの運転手になりきっていました。同じものを長く並べるだけで、見立て空間としてのインパクトが生まれます。
CASE 3|ひとつのテーマでさまざまな場面に展開する [保育園ごっこ]
子どもからの要望で始まった、保育園の先生や園児の親になりきって保育園での一日を再現する遊び。給食の先生になってお料理ごっこ、誕生日会ごっこ、お散歩ごっこ、具合の悪い園児を病院に連れていってお医者さんごっこ…と保育園で起こることをテーマに、いろいろなシーンに展開していきました。特にこの遊びはお気に入りで、毎回長い時間つづきます。
*画像はイメージです。
これまでの過程を通じて、「遊び」をマネジメントする上で、大切だと考えるポイントはこちらです。
・連鎖:何かをつくったら、それを次の遊びに活かす
・空間化:空間を大きく使うと、楽しみ方が劇的に広がる
・見立て:ごっこ遊びは、とにかくなりきる
ただし、子どもの自主性を高める上では大人がマネジメントしすぎないことも重要です。子どもの成長に合わせて「子どもの自主性」と「大人側からのマネジメント」の両者のバランスを取って、接していくことがポイントとなりそうです。
3|心のマネジメント
平常時ではない状況を乗り切るために、そして健康な心を維持するために、意識してきたことをいくつか挙げてみます。
1日、1ヨガ
気に入ったキッズヨガの動画を観ながら、できるだけ早い時間に毎日行いました。呼吸を整えることで、精神的なゆとりを感じることができました。
家事の時間は、動画に頼る
シフト表をつくっていても、会議が延びてしまったり、食事の準備が重なったりして、どうしても向き合えない場面も出てきます。そんな時には「30分」と時間を決めて子どもに動画を観てもらうことで、お互いの時間を確保しました。
オンラインで、遊びのヒント探し
1日の終わりに「明日は何して遊ぼうかな」と情報をサーチするのも楽しみになりました。人様のアイディアに刺激をもらいながら、いろいろな遊びを試すのも楽しいものです。
煮詰まったら、ビデオ電話
子どもが単調な遊びに飽きたり、機嫌を損ねたり、親が少し疲れを感じた時は、家族や友人、保育園のお友達とオンラインでつながることで救われました。
無理はせず、よく眠る
健康のためでもありますが、頭が働かないと子どもとの遊びも楽しめません。できるだけ睡眠は多く摂るように心がけました。
昼寝中は、自分の時間に
子どもの昼寝時間は、一緒に寝てしまうこともありますが、自分だけの特別な時間と捉えて、思いのままに過ごしました。
ポストコロナにおけるライフマネジメント
本稿では、私自身の生活で起こった「在宅育児」の経験について、マネジメントの視点で取り上げてみました。「マネジメント」と言えばビジネス上でよく活用する言葉でしたが、これから訪れるポストコロナの新生活においては、プライベートの時間も含めた生活の場面で、いろいろと活用できる場面が出てくるのはないかと考えています。
例えば、テレワークや時差出勤等の導入により、働き方やライフスタイルは大きく変わることでしょう。これまで会社に出社することで管理されていたモノ・コトが、自分自身で管理する「セルフマネジメント」に移行することも考えられます。
リモートワークがスタンダードになれば、生活の拠点を複数もち、社会の情勢に合わせて拠点を選択する人たちも増えてくるのではないでしょうか。そういったライフスタイルにおいては、仕事とプライベートの時間を柔軟にマネジメントすることこそ、これからの新時代を生き抜く力になるのではないかと考えます。
これからもNew Normalの身近な生活で起こる事象と社会課題を見合わせながら、空間体験を軸とした考察を進めてまいります。
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ノムログ編集長
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