「個人が企業を動かして、企業が社会を変える」(後編)

田中 摂
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田中 摂

Game Changer Catapult (Panasonic)×NOMLAB (乃村工藝社) トークイベントレポート

Panasonicにおける企業内イノベーションアクセラレーターであるGame Changer Catapult(以下、GCC)。一方「デジタルイノベーション×場づくり」をテーマに、新しい集客創造に取り組むNomura Open Innovation LAB(以下、NOMLAB)
イノベーションをテーマに活動するふたつの組織ではどのように、チームをマネジメントし、またチームの一員たちはどのようにして自分の意思や思いを実現化させているのか。

後編では「空間体験を創るクリエイティブ」と題し、開発者たちによるトークセッションの模様をお伝えします(マネジメントの立場から語った前編「個人のWILLを実現するチームづくり」はこちら)。

次世代型ジュークボックス?「Howling Box」

GCCからは、まず「Howling Box」を開発した、溝口仁也さんが登場。
「Howling Box」は、お店でかかっている音楽から、自分の気分に合ったお店を探すことができ、自分の聞きたい曲がリクエストできる仕組みを提供する音楽を軸としたコミュニケーションサービス(「Howling Box」のWEBサイトはこちら)。まさに次世代型のジュークボックスとも言えるようなサービスです。

「Howling Box」の紹介ムービーにはご本人が登場。俳優顔負けの演技に会場からは笑いと拍手が起きました。

「Howling Box」に込めたWILL

音楽が好きで自分でも音楽活動をしていたという溝口さん。就職して縁もゆかりもない群馬県に配属され、SNSで友人とやりとりをしてみると、face to faceのときに出来ていた音楽やライブの体験の共有がなかなか満足にできないという実体験が、発想のきっかけにあったとか。そこから現代のコミュニケーションについて考えが発展していき、流行がテレビとかマスメディアだけでなく、もっとローカルなコミュニケーションから生み出されても良いのではないか、といった思いから、「Howling Box」が作られていったそうです。
「Howling Box」の今後の展開について、次のような思いを語っていただきました。

Howling Boxがいろんなお店に入った暁には、ジャズの気分だけど餃子が食べたい、とかパンクな気分だけど喫茶店でコーヒーが飲みたい、とか、雰囲気を通して新しいお店の探し方ができたら良いと思っています

自宅で極上のコーヒー体験を提供する「The ROAST」

つづいてご紹介いただいたのは、家庭でコーヒーの焙煎が楽しめる「The Roast」プロジェクトの橋本裕美さん。構想から3年、プロジェクトメンバーだけではなく様々な関係者を巻き込みながら、すでに事業化されている商品です(「The Roast」のWEBサイトはこちら)。

「The ROAST」に込めたWILL

個人的な体験が元となった「Howling Box」とは異なり、「The Roast」はこれまでPanasonicが培ってきた調理家電の技術やスマート家電のクラウドの技術を生かして、生産者と消費者を直接つなぐような食のサービス事業ができないか、という思いから発想したと語る橋本さん。コーヒーにこだわりのある人たちが自宅でも極上のコーヒーが楽しめたら新しい体験の価値の提供につながると企画されました。

The Roast

IoTサービス事業の経験で得た「ソフトを更新していくことでサービスが向上していく」技術を駆使。さらにトップクラスの焙煎士やコーヒー輸入商社に思いを伝え、厳選した生豆やその豆にあわせた焙煎プロファイル(焙煎のレシピ)を提供してもらうサービスを実現させた、これまでの経緯をお話しいただきました。

これまで培ってきた様々な事業の技術を活かすという、歴史ある大企業ならではの思いも魅力的ですが、「The Roast」を通じて感じたという橋本さんの気づきが印象的でした。

「The Roast」を通じて、焙煎関係者同士のつながりが出来たりとか、焙煎士の方と地域のコミュニティづくりが出来たりしています。
コワーキングスペースでも活用されていて、焙煎の香りや音を実感できることから、コーヒーを入れる時間を楽しめる余裕がクリエイティブに必要なのだという話しも聞いています。

コーヒーは飲み物というだけではなくて、人と人をつなぐことができる体験のひとつなのだと思います。

プロトタイプのWILLをクライアントワークへ

最後はNOMLABの吉田敬介が登壇。デザイン部とNOMLABの両方に所属し、NOMLABでプロトタイピングに取り組んでいる立場から、プロトタイプがどうクライアントワークにつながっているか、様々な事例とともにお話ししました。

クライアントのオーダーに合わせてデザインを考え、空間を創っていくのが通常業務。一方、プロトタイピングは、エンジニアやデザイナーや外部のクリエイターなどいろんな職種の視点を入れて、組み合わせて何かをつくれるか、という全く違うプロセスでものづくりをしています。
昨年取り組んでいたプロトタイピングは、amanaのプロトタイピング・ラボラトリーFIGLABと協働で開発した「Kinetic Display」。
49個のモーターが前後にスライドすることで、3次元のグラフィックを生成するディスプレイです(詳しい情報はこちら)。

Kinetic Display

空間を生業にしている乃村工藝社と映像表現に強いamana。お互いを知ることから始まり、それぞれの得意領域を出しながら、「3次元のグラフィックディスプレイをつくりたい」「映像と空間をつなぐメディアをつくりたい」という思いでできた作品であることを紹介しました。
またプロトタイピングを通して、クライアントワークに生かされた事例として、最新のクライアントワークを紹介(最新事例はこちら)。
プロトタイピングが自分にとってブランディングの場にもなっており、クライアントワークで自分らしさを表現できることにつながっていることを語りました。

最近ではプロトタイピングとクライアントワークの境界がだんだん薄くなってきています。

どちらでもないけど自分しかできない仕事、というのが増えてきていると感じています。

「Howling Box」「The ROAST」体験会

トークセッションのあとは、「Howling Box」や「The ROAST」の体験会を実施。

参加者たちお待ちかねだった「The Roast」の飲み比べ

「Howling Box」の体験

それぞれの開発者から説明を聞いたり、体験の感想を交わしたりするだけではなく、現業をやりながら、どう新しい事業にチャレンジしたのか、新しい取り組みをどう次の仕事に活かすのか、などなど。
コーヒーを片手に、互いの働き方についてもディスカッションが途切れないにぎやかな夜となりました。

個人が企業を動かして、企業が社会を変える。
これからも「個人のWILLを実現するチームづくり」を追求する
両社の様々な取り組みを多くの方と共有していきたいと思います。

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田中 摂

田中 摂

NOMLAB マネージャー
出る杭を伸ばすマネジメント

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